暁 〜小説投稿サイト〜
奇跡はきっと
6部分:第六章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
んと息子さんに御馳走するか」
「ああ、卵もつけてな」
「いいねえ、奮発だよ」
 やっと鶏肉を入れられるだけ余裕ができたのである。そうして卵もやっとトッピングで出せるようになったのだ。まだまだ卵は高価ではあったが。
 そうしてであった。今丁度カレーを待っていたり食べている客達も。口々に言うのだった。
「そうそう、俺達だってな」
「その時のこと覚えてるぜ」
「若し息子さんが生きて帰って来たらな」
 一斉に二人に対して言うのであった。
「何かプレゼントするってな」
「言ったよな」
 こんな話をしながらそのうえでカレーを食べている。そして実際にそれぞれ出すのであった。
「靴な」
「帽子だ」
「袋な」
 見ればどれもあの時よりもかなり立派なものになっている。皆それぞれそれを出したのである。それだけ復興しているということだった。
「さあ、皆であの家に行ってな」
「プレゼントするか」
「そうだよな」
 こんなことを話してそのうえでマチの家に向かう彼等だった。彼等もまた満面の笑顔で。街はもう家が立ち並びそうして空は晴れやかなものだった。戦争の傷跡が癒えようとしていた。そんな中での些細な奇跡であった。マチがどう思っていようともそれは奇跡であった。


奇跡はきっと   完


                  2009・6・27

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ