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ゲリラ
4部分:第四章
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「スペインでは実際に多くの血が流れたのだからな」
「ですから私は。とても」
「気持ちはわかる。私も同じだ」
「大佐もですか」
「そうだ。嫌なものだな」
 彼は酒を飲んでいなかった。自分の前に置かれたそれを見たままだ。オーグルにこう言ったのだった。冷たく硬くなった声でだ。
「勝利の裏では何があったのかを知るということはな」
「全くですね」
「イギリスは勝ちスペインはフランスを追い出した」
 このことは事実だった。紛れもなくだ。
「だが。その為に何があったか、何をしなければならなかったか」
「知っていると」
「勝利も祝えないな」
「そうですね、本当に」
 二人で話すのだった。彼等は勝利の美酒は飲めなかった。とてもだ。
 スペインでのことはゴヤが絵に残している。グロテスクであり醜悪でもある一連の絵はどれも正視に耐えないものがある。だがそれは紛れもなく現実を描いたものである。それは間違いない。
 そしてこの戦争だけではなくだ。これ以降ゲリラ戦というものが度々起こるようになった。それによって得られた勝利は確かに多い。だがそれ以上に犠牲が出てしまっている。惨たらしい悲劇も頻発している。それもまた現実だ。それが何時終わるのかは誰も知らないしわからない。絵に残したゴヤやオーグル達は今も行われているそれを見てどう思うかもだ。それも同じことである。


ゲリラ   完


           2010・11・30

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