第十話『新たな敵』
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音に反応して来やがったのか!」
耳元で陵太が叫ぶ。流石にこれだけの数を相手にするのは、陵太達だけではかなりきついだろうと思った。だが、前に出た人間は意外な人間だった。
「ぼ、ぼくに任せて」
それは、今まで散々ビビりまくって、かなりの頻度で感染者を呼び寄せる男、千歳直哉だった。その手には、杖がわりにしていた鉄の棒が、刀を持つように持たれていて、スッと慣れたように左足を前にだし、顔の横に棒が来るような構えをとる。
「あの構え……天然理心流…」
「ふっ!」
力強く踏み出した直哉は、襲いかかる感染者たちを、流れるような型で頭や首の骨を砕いていく。
「っらあ!!」
最後の一人を素早い突きで薙ぎ倒すと、こちらを振り向いて叫んだ。
「今だよみんな!み、道開いた!」
その声に我を取り戻すと、公園の出口に向けて走り出した。
「よくやったぞ千歳!」
俺を担ぎながら陵太は初めて千歳を褒め称えていた。
「また来た!千歳!少し時間を稼いでくれ!」
そう言って千歳に振り向く俺だが、千歳は真っ青な顔をしてこちらを振り向いた。
「ぼ、棒が折れちゃった……」
「……」
「……」
「みんな!全力で走って!!」
優衣架の声に後押しされて全員が一斉に全速力で走り出した。
「死ぬ!!絶対死んじゃう!!」
千歳は涙目になりながら懸命に腕をふっている。
「お前は棒がないとダメなのか!クソ!誉めた俺がバカだった!」
こいつらなら、世界が終焉を迎えても死ななそうな気がする。いろんな意味で……。
死人がうごめき襲いかかり、空からは糞 (戦闘機)まで降ってくる。そんなふざけた世界でも、こいつらとなら生き抜ける気がする。なぜかはわからないけど、そんな気がする。
ーーーー月見ヶ丘公園 北側出口
瀬田広一は、元は戦闘機だったと思われる鋭く長い破片を手に空を眺めていた。
「母雲 零斗……面白いな〜。また会えるといいな〜」
グルルルルルル……
「ふん!!」
おぞましい声をあげながら近づいてくる感染者に向けて、手にもつ破片を降り下ろし、貫通するほど深々と突き刺し、不適な笑顔を浮かべながら再び空を見上げた。
「君は僕の手殺すんだ……それまで死んじゃダメよ……」
そう言って広一は、突き刺した破片をグリッと一回ねじり、ついで引き抜いてから、業火の残る町へと歩き出した。
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