第十話『新たな敵』
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ーーーー神河駐屯地戦略化学兵器研究所 午後8時
「主任、情報です。防衛省統合情報本部に問い合わせたところ、どうやら『S』による襲撃が行われたようです」
その話を聞き、俺は手に持っていた缶コーヒーを落としそうになる。
「なっ……!本当かそれは!?」
驚きの表情で問いかける俺に、松下三尉も浮かない表情で語る。
「ええ……。統合情報本部に友人がいまして、秘密で教えてもらったので、間違いないと思います。向こうでも、誰がそんなことをしたのか、調査中のようです」
『S』と言うのは、自衛隊で使う隠語で、『陸上自衛隊特殊作戦郡』のことを言う。つまり、身内からの襲撃を受けたと言うことになるのだ。
「特殊作戦郡を動かせるということは、陸将クラスか、幕僚長クラスの人間で、我々の任務を快く思っていない人間の命令と言うことだろう」
相変わらず腕組みをしながら話すのは、眉間に深々とシワを寄せる石井二等陸佐だ。
「つまりこれは、防衛省内部の派閥によるものだと?」
「私はそう考える」
松下が懸念を浮かべた顔で聞くと、石井は即座にそう答えた。
まさか……これは防衛大臣からの直接の命令だ。つまりは政府の意向と言うことになる。それを快く思わない人間……一体だれが……。
ーーーー同時刻 月見ヶ丘公園
……耳が痛い。体も痛い。頭も痛い。何が起こったんだっけな……。と、頭痛に耐える頭で考える。
ああ、そうだ。戦闘機が撃墜されて、俺たちの上に落っこちてきたんだった。体を起こしてみると、先程自分が立っていたところから、およそ十メートルほど離れたところにいた。どうやら爆風で飛ばされたらしい。
「んんっ!」
痛い体に鞭をうって立ち上がろうとすると、ふと腹部の辺りに違和感を感じた。
「ん?」
なにかと思って見てみると、左脇腹より少し中心に近いところに、黒っぽいなにかの破片が突き刺さっていた。
「……マジかよ…」
痛みという痛みは感じない。ただ、何か暑いものを押し付けられているような感じだ。
そうだ。皆は……。
刺さった破片は後回しにして、まずは皆を探すことにした。
「おいみんな!!大丈夫か!!」
返事はない……。が……
ガシャガシャ
「ッ……!」
音のした方を見ると、そこには、鉄の棒を杖がわりに歩く千歳の姿があった。
「千歳!」
体がかなり痛かったが、構わず走り出した。
「やあ、母雲くん……大丈夫?」
「ああ、俺は大丈夫だ。お前は?」
すかさず質問し返すが、千歳は笑顔で応じた。
「うん。これはフラフラするからついてただけだから」
そう言って千歳は、右手にもつ棒をしゃくる。
「そうか……よし、他
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