3部分:第三章
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第三章
「それはな」
「当たり前だ。そんなものあるか」
「俺達みたいなしがない海賊にな」
「或る筈がないだろ」
「むっ、そういえば」
カエサルは海賊達の今の言葉を聞いてだ。周囲を見回した。見れば味とはみすぼらしくあまり大した食べ物はおろか武器もなかった。
それを見てだ。カエサルはこうも言うのだった。
「御前達あまりいい暮らしをしていないな」
「そんなの見ればわかるだろ」
「しがない海賊だぜ、所詮な」
「漁師もやってるからかろうじて食えてるけれどな」
「生きるのだけで精一杯なんだよ」
「そんな有様なんだよ」
「そうなのか」
それを聞いてだった。カエサルは納得した顔にもなった。それでだった。
彼等にだ。こう言うのだった。
「それではだが」
「ああ、何だよ」
「それでって」
「まだ何か欲しいっていうのかよ」
「もう海賊を止めたらどうだ」
彼が今度言うのはこのことだった。
「ここは魚も少ない。もっといい場所で漁師でもやれ」
「どっかなあ。あるか?」
「俺達ここに流れ着いたからあまり場所知らないんだよな」
「一応商人でもあるけれどな」
この時代商人と海賊は紙一重だった。すぐに変わるものだった。
「まあそれでもだよ」
「ここはな、船も少ないし魚も少ない」
「いい場所じゃないのはわかってるさ」
「それでもなんだよ」
こうぼやくことしきりだった。
「まあそれだけの身代金出してくれるんならな」
「海賊から足洗ってそれでどっかで漁師やれるな」
「エジプトで商売でもするか?」
「アレクサンドリアなんかいいな」
「そっちの方がいいな」
カエサルは割かし親身に彼等に話すようになっていた。
「御前達は海賊には向かない」
「向かなくても生きていかないといけないしな」
「そうだよな」
「食わないとな」
「その辺りが難しいな。まあとにかくだ」
カエサルはここで話を戻してきた。
「いいか?パンをワインだ」
「それと鶏肉とオレンジな」
「オリーブもだな」
「そうだ、すぐに持って来い」
腕を組んで威張っての言葉だった。
「わかったな」
「わかったわかった」
「宴の時に用意してたのをな」
「持って来るからな」
こう話してであった。カエサルは人質となりながらも美食を楽しんでいた。しかもアジトの中を堂々と歩き回る。船も見るのだった。
そしてだ。船についても言う。
「酷い船だな」
「だから金がないんだよ」
「それも全くな」
「だからこのオンボロをだよ」
「使ってるんだよ」
「この船だと嵐に遭ったらひとたまりもないな」
朽ちるものさえ見せているその船を見てだった。カエサルは言うのだった。
「終わりだぞ。それで」
「だからそれはわかってるんだよ」
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