19.君はここにいてもいい
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………」
ゆっくりと、ゆっくりと倒れ込んだ。
咄嗟に彼女が頭を打たないように抱きとめたリングアベルは、出血で段々と朦朧となる意識を何とかつなぎとめながら、大きな大きなため息をついた。周囲の青い結界のようなものは消えうせ、そこには破壊痕の残る公園だけが広がっている。既に通りすがりの人々が不信に思っていたらしく、ガネーシャ・ファミリアのメンバーも見受けられる。
血塗れのリングアベルを見た人がポーションを片手に駆け寄ってくるのと、ミネットの安否を気遣う声。そしてビスマルクを相手にしていたユウとジャンの声を遠くに聞きながら、リングアベルは倒れ込んだ。
「こ……これは、今度こそ女神ヘスティアを泣かせてしまうな……ッ!くそう、ミス・ミアに……向こうから迫ってくる危機を、どう処理するべきか………聞いておけば、よかった――」
取り敢えず、起きたらミネットに事情を訊こう。
それだけを決めて、リングアベルは眠りについた。
= =
暗い、暗い、路地の裏。雨風に晒されるそこで、生きてきた。
空腹を残飯で凌ぎ、はねられた泥を雨水で洗い落とし、猫たちの声を聞いて。
周囲は誰も助けてくれない。周囲は誰も信じることが出来ない。ヒューマンだろうがキャットピープルだろうがウェアウォルフだろうがパルゥムだろうが、神だろうが。等しく誰もが信頼できない。
どうせ人間は裏切るんだ。人間なんかより猫のほうがよっぽど信頼できる。
猫は嘘をつかない。みんな、自分を助ける事に見返りを求めない。
そしてなにより、人間のようなしがらみがない。
それでも生きていけない時は、薄汚い人殺しの仕事で路銀を稼いだ。
猫たちの情報網があれば、誰がいつ殺せるのかくらいは分かっていた。
気が付けば、猫たちに殺人技を教えることが出来るようになっていた。
ある日、一人の神の暗殺依頼を受けた。
黒い肌で筋骨隆々の男。ゾウという動物の特徴を模した仮面をかぶっていた。
神を殺すのは初めてだが、その頃には誰かを殺すことに何の躊躇いも抱かなくなっていた。
そして――失敗した。
『そう、何を隠そう俺がガネーシャだ!』
『いや知ってるにゃ!むしろ違ったら困るにゃ!?』
『しかしお前、猫を躾けるのが上手いな!俺が今まで出会った人間の中で一番見込みがあるぞ!よし、今日から俺のファミリアに来い!』
『強引!?ミネットの意志は無視にゃ!?大体、ミネットは猫以外を信頼する気は――』
『ならば問題ない!何を隠そう俺がガネーシャだ!』
『説明になってない上にそれはさっき聞いたにゃあああ〜〜!!』
今でもそれがなぜ失敗したのかは覚えていないけれど、とにかく失敗した。
でもその神、ガネーシャはミネットの望む物だけ
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