主神、加治神訪問
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」
「そうじゃ。ただ代物が代物でのう」
要領を掴めないようであるヘファイストスにテュールは背に負っている背嚢を顎でしゃくるようにして示した。
「わかったわ、こっちに来てちょうだい」
ヘファイストスはその意図を汲み取り、一度テュール、いやテュールの背にある背嚢に一瞥を与えてから、店の奥へ歩き出した。
「うむ」
テュールも満足げに頷いてその後に続いた。
「………………」
そして、途中から存在を忘れられていた店員は二人の緊張感のあるやり取りにすっかり硬直していた。
◆
「それで、その代物って何なのかしら?」
一階の奥にある休憩室とおぼしき、四M四方の小部屋でヘファイストスは切り出した。
部屋の真ん中に机があり、対面するように二組の椅子が並べられていて、二柱の神もそれに従って、向かい合うように席についていた。
「これじゃ」
テュールは勿体振らず、背嚢に納められた『代物』を机に取り出した。
「ちょっと……これ…………何よ」
終始冷静だったヘファイストスは、背嚢から取り出された瞬間に禍禍しい障気を放つ始めたそれに動揺を隠しきれずに声を震わせる。
「御主にもこの牙の気が見えるか。なら話が早いのう」
机に広げられた十数本の青黒い『牙』を見下ろしてテュールは言葉を続ける。
「これは怪狼の牙じゃ」
「…………フェンリルの牙だなんて」
信じられないと言うかのような顔をしているが、その声音にはどこか合点のいった感があった。
「ウィザルにもらったのじゃ。『思うところがあるだろう』なんて言って全部妾に寄越したのじゃ」
思うところなどないのにのう、とテュールは何気なく右腕をさすりながら言ったが、
「というか、女とあんなに話せぬ彼奴が何故妾とは平気で話せるのじゃ」
すぐに不平とともに頬っぺたをぷくぅと膨らませた。
「…………これに見合う武器なんて…………」
『それはあなたのロリ巨乳よりもロリな矮躯とかそんな仕種に女っ気のかけらもないからでしょ』なんて答える余裕など当然なく、ヘファイストスは目の前にある牙の山の価値を見極め、今ある【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師でこれと釣り合う武器を作れる者を頭の中で探す。
ここで少しでも下回る者を探さないヘファイストスは律義実直と言っていいだろう。
「見合う武器を作れる鍛冶師は一人しか思い当たらないわ。いや、彼女に作れるかどうかも怪しいかもしれない」
しばらくの黙考の末、正直な結果を口にした。
「じゃろうな。神をも恐れさせた怪狼じゃ、当然じゃろう。じゃから別に
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