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逆さの砂時計
ロザリア
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あんなことまでしたのに笑いかけるあの神父は、バカなんだろうか?
 いや、バカなんだろう。
 バカ以外の何者でもない、バカだ。

 ぎゅうっと膝を抱えて縮こまる少女の肩に、冷たい何かが落ちて弾けた。

 雨だ。
 そう認識した途端、大きな雨粒が滝になって降り注ぐ。
 屋根がある場所へ行こうと立ち上がり、適当に空間移動を使って。

「げっ」

 瞬時に後悔した。

「…………お前」

 この下町のゴロツキを束ねる、見るからに悪い顔の男が、目の前に居る。
 性格の不一致とでもいうのか。
 この男とは、あまり良好な関係とは表現できない間柄だ。
 喧嘩になりかけた回数も少なくない。
 それでも、力は見せていなかった相手。

「おい、宿無し女。お前、今どっから現れやがった」
「……すぐに出てくから、気にすんな」

 目で確認した限り、この悪漢が牛耳るアジトの入口らしい。
 男の背後、数歩先の出入口に、雨滝のカーテンが見えた。
 他のゴロツキ達が見当たらないのは幸運だったが……
 もっと、条件を細かく指定するべきだった。

「待て。そういえばお前、よく裏路地で姿をくらませてたよな」

 男が少女の左手首を掴む。
 自分を映す黒い目に好奇を見出した少女は、本能でヤバいと感じた。
 こういう輩は力を恐れない、とは、少女自身の経験則だ。

「面白ぇじゃねーか。なあ?」
「何の話だか。悪いけど、私は行くよ」

 手首を引き離そうとして、逆に引っ張られた。
 男の筋肉質で分厚い胸に顔がぶつかり。
 逃げようとする少女の体を、背中に回された男の両腕が捕らえる。

「外は雨だぜ。ゆっくり休んでいけや」
「気持ち悪い! 触るな!」

 ゴツい指先が少女の背中を伝い下りて腰を撫で回し、更に下へと伸びた。
 嫌悪で身をよじる様を気に入った男は、片方の手で後頭部を掴んで少女を上向かせ、唇を奪おうとする。

「やめ……っ、」
「おやめなさい。見苦しい」
「…………ああ?」

 吐息が互いの鼻をかすめる距離にまで迫ったところで、邪魔が入り。
 男は少女から顔を離す。
 制止の声は、出入口の一歩外で雨に打たれている神父の物だった。
 ずぶ濡れなその姿に、少女は目を丸くする。

「千客万来だなあ、オイ。女はともかく、野郎に貸してやる屋根は無ぇぞ」
「屋根は必要ありません。彼女を解放しなさい」

 男は不機嫌に舌を鳴らすと、少女の体を突き飛ばして神父に詰め寄り。
 問答無用で顔面を殴った。
 荒事に慣れていない神父の体が、あっさりと地面に崩れ落ちる。

「おい! 殴ることはないだろうが!」
「うるせえ。俺のシマで文句タレてんじゃねぇよ」

 更に容赦ない蹴りを食らった神
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