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第一章
カエサルと海賊
ユリウス=カエサルの若き日のことである。
彼は若い時には民衆派と元老院派の対立に巻き込まれていたのだ。
元老院派の領袖はスッラという。あまりよくはない身分の男だがそれでもだ。その冷静沈着な性格と類稀なる決断力、それにその巨大な資質によってだった。彼は瞬く間にその元老院派を動かしローマに絶大な影響力を持つまでになった。
カエサルは民衆派だった。だからスッラにも元老院派にもよく思われていなかった。それで身を隠す為にロードスに留学することにしたのだ。
当時この島は学問の先進地域であった。彼は身を隠すのと共に学びそこから多くのものを身に着けようとしていたのである。
その為にロードスに向かう。しかしだった。
海においてだ。彼の乗る船が不幸に遭ったのであった。
気付けば周りにだ。怪しい船が集まりそこから柄の悪い男達がやって来る。彼等が何者なのかは言うまでもなかった。
「さあ、逃げるなよ」
「逃げれば容赦しないぞ」
「いいな」
「海賊か」
カエサルはその彼等を見て言うのだった。
「貴様等、そうだな」
「ああ、そうだよ」
「その通りだよ」
「俺達がそれだよ」
「わかってるじゃねえかよ」
「ふむ、それではだ」
カエサルは彼等の話を聞いてだ。あらためて話した。
「貴様達の目的は何だ」
「何だって。まずはこの船にある金目のものは全部貰うぜ」
「それで手前等をタテに身代金を貰うんだよ」
「それに決まってるじゃねえかよ」
「それがわからねえっていうのかよ」
「そうだろうな。海賊ならな」
カエサルはそれを聞いてまた言うのだった。
「それは当然だな」
「わかってるのか?こいつ」
「身なりがいいところを見ると貴族みたいだな」
「船はローマのものだし」
「ローマのお貴族様か」
「如何にも」
その通りだとだ。カエサルは胸を張って答えた。
「私の名前はカエサルという」
「ふうん、カエサルねえ」
「それが手前の名前か」
「一応覚えたぜ」
「ガイウス=ユリウス=カエサルという」
その名前もついても話すのだった。
「わかったな」
「そこまで言わなくていいけれどな」
「わかってるからな」
「そこまではな」
「そうか。だが私の名前は覚えたな」
カエサルは海賊達にそのことを確認させた。
「わかったな」
「ああ、わかったよ」
「しかし貴族ならな」
「身代金は期待できるな」
「そうだな」
海賊達はそのことは確かだと言うのだった。そうしてだった。
どれだけの金額を要求できるか。カエサルの前で話すのだった。
「これだけじゃないのか?」
「いや、これ位だろ」
「もっと安いものだろ」
「なあ」
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