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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
18. 試練の戦い
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ぐ……ま、まだ分からないぞ……!人生はいつだって一発逆転のチャンスだからな……!!」
「ふんっ………なら、ここで終わらせてあげるにゃ!!」

 ビスマルクを引き連れたミネットが斧を振り上げ、リングアベルの前に立つ。
 痛みから大量に吹き出る汗と血液に顔を顰めながら、リングアベルはまだ動く体でその斧を防ごうと腕を上げた。……疲労と傷が重なったためか、「火事場力(サモンストレングス)」のスキルが少ないながら発動しているようだ。攻撃力と防御力がブーストされ、なんとか体が動く。

 だが、リングアベルは上げた腕に握られる剣をミネットに向けられなかった。

「何故だ、ミネット……こんな事をしているのに――何故そんな泣きそうな顔をする」
「……何故とか、どうしてとか………そんな言葉に意味は無いのにゃッ!!」

 ミネットの表情には、明らかに殺人に対する忌避感が露わになっていた。
 目からは今にも涙がこぼれそうなほどに潤み、自分の行動を拒絶するように体は強張っている。
 だが――そうなればなるほどに彼女の身体からは躊躇いが消え、呼応するように額のウロボロス印が輝きを増していく。

(――これはまさか、洗脳ではなく脅迫や呪いの類なのか!?)
「ミネットだって………猫たちのためにカツオブシを買ってくれたリングアベルを殺したいわけじゃないのにゃ。でも、ミネットは………ミネットは二度も捨てられたくにゃいッ!!あの孤独と空腹の時代に戻りたくないのにゃッ!そして捨てられにゃい為には………ミネットは『アイツ』から力を取り戻さなければならないのにゃあああッ!!」
「『あいつ』………それが君に俺を殺すようにそそのかした――?」

 ミネットの斧が振るわれ、リングアベルの剣が弾かれる。
 放物線を描いた剣はからん、と手の届かない場所にまで転がってしまった。
 しまった――そう思った時には、既にミネットの斧は頭上に移動していた。


「約束通りお墓は建ててあげるにゃ――じゃあね、リングアベル」


 冒険者リングアベルの物語の終わりを告げる斧が、振り下ろされる。
 
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