第十一話 鬼械
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クエストの件で元々あった亀裂が大きくなり内部分裂を起こし、それでヤケになったキバオウがボスのラストアタックボーナスに執心しすぎた結果主力プレイヤーの大半を失うことになった。
アルゴから聞いた、「軍が危惧している戦力不足」とやらの話も攻略組から去ることになった今、目にかける必要も、動く必要もなくなった。
その代わり、攻略組は軍という一大勢力の一つを失うという大損害を被った。
だというのに、リュウヤはまるで他人事のような気分だった。
一つ気になることと言えば、ボス戦の前にキリトが言っていたこと。
「第一層のフロアボス戦の時と同じ目してるぞ」
はて、自分はその時何か変だっただろうか。
そして今その目をしていることに、なんの意味があるのか。
そんな思考に答えを出すのもすでに億劫となっていたリュウヤは思考そのものを放棄し、宿のベッドで倒れていた。
ーーー思い出す。
ベッドで横になってから数分、コンコンと控えめなノックが聞こえてきたのだ。
「……お邪魔します」
カギをかけ忘れていたのか、ドアが開き女性が入ってきた。
カチャンとドアを閉めてカギをかけたその人はリュウヤの寝ているベッドに近づき座った。
「……サチ、か」
「ごめん、邪魔かな?」
「…………いや、いてくれ。……頼む」
「うん、分かった」
うなずいたサチはクツを脱いでベッドの上に寝転がり、背を向けるリュウヤにピタリとくっついた。
「大変、だったみたいだね」
「………」
「また、目の前でーーーだもんね」
「…………」
「でも、一人じゃないよ」
「……!」
「だって、私も一人じゃないから。にいがいるから」
「俺は……一人じゃ、ない、か……」
「うん、そうだよ」
いつの間にかサチの方へ体を向けていたリュウヤはサチをギュッと抱き寄せた。まるで抱き枕のような扱いにサチは嫌がることなく、むしろ嬉しそうにしていた。
「にい、私も寂しい……」
「そっか」
「だから、一緒」
「ああ、そうだな……」
リュウヤの目から雫が落ち、彼の目に暖かい暖炉の火が灯った。
そして兄妹は二人仲良く眠りに落ちた。
いつまでも、この絆は、この温もりは消えないから。
ーーーーーーピシッ……。
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