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逆さの砂時計

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してすべてをなかったことにしたいのに……愛していると、人間の声がうるさい。煩わしいほどにお前を愛していると叫んでやまない。こんなにも、……憎いのに……」

 憎悪を湛えた瞳で。
 割れ物を扱う仕草で。
 彼は、彼女の唇を何度も何度も舐っては吸いついた。



 落ち着かない呼吸と、朦朧とした意識の中で。
 ロザリアは、この狂乱がいつから始まったのかを考えていた。

 一月前までは、何気ない普通の日常に居た筈だ。
 くだらない説教や押し付けがましいお節介が得意なクロスツェルと。
 最近になって、少しずつそれに慣れてきていたロザリア。

 他人の為に全力を尽くそうとするバカな神父を、やはりバカ者だと。
 そう思いながらも突き放せずにいたのが間違いだったのか。

 目の前で冷たくなっていった親友の姿を思い出しては、愛しているなどとささやく神父に、どうしようもない怒りを覚えた。
 衣服を剥ぎ、教会の地下室に鎖で繋いで、毎晩一方的に体を押し付けて。
 そんなことの為に自分を拾ったのかと、憤りを募らせた。

 彼がロザリアを、『女神アリア』と呼ぶまでは。


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