最終六十六話:俺ノ為ノ世界
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のに、犠牲にしないと言ってもらったのに自分は犠牲を認めていいのか?
―――かつてのように残酷なハッピーエンドを認めてもいいのか?
「……めない。そんな結末―――認めないッ!!」
息を吹き返したように天に咆哮上げるルドガーにその場にいる者達全員の視線が釘づけになる。
彼はしっかりと大地を踏みしめ立ち上がる。
そんな彼の瞳にはどこまでも強く光る炎が宿っていた。
それはかつてエルを救う事を決意した時のように。
―――少女の為に世界を壊す覚悟を決めた時のようにどこまでも純粋な光だった。
「俺の……俺の望む世界には黒歌がいなきゃダメだッ! 兄さんがいなきゃダメなんだッ!」
逆に言えばそれだけあれば他には何もいらない。
彼の雄叫びからはそんな想いが伝わってくる。
「でもどうやって叶える気だい? 勿論ユリウスを生き返らせることは出来るよ。
でも、その場合、黒歌は助からない。逆に言えば黒歌を助ければユリウスは生き返らない」
オリジンの言うように二つの願いは重ならない。
外道な方法ではあるが黒歌を殺して一時間以内に死んだ人間全てを生き返らせてくれとでも頼めば二人を生き返らせることは可能だろう。
だが、勿論ルドガーはそんなことはしない。
例え、それが最善の選択だとしても。
後で生き返らせるから今は死んでくれと愛する女性に言えるだろうか?
果たして生き返らせてもかつてのように愛せるだろうか?
いくらでも代わりがきく“物”として見てしまうのではないのだろうか?
何よりも大切な人だからこそ、一度たりとも死なせてはならない。
もし死なせてしまえば、全てを賭けて守り抜いてくれた兄にも今まで犠牲にしてきた者達にも顔向けが出来ないだろう。
もっとも、そんな最善の選択などルドガーの頭には最初から無いのだが。
「兄さんに言われたんだ、俺は。『お前は、お前の世界を創るんだ』って……」
もう、随分と昔になってしまった言葉を噛みしめるように呟くルドガー。
そして、真っ直ぐにオリジンを見つめて口を開く。
たった一つの純粋な願いを。
「俺の願いは―――――――――だ」
息をのむ一同。だが、ルドガーは微動だにせずオリジンを鋭い眼光で射抜き続けるだけだ。
その内、クロノスが怒りで凄まじい形相になりルドガーに怒鳴りかかってくる。
クロノスにはあのルドガーがこのような選択をするとは思えなかったのだ。
「貴様、この世界までも壊す気か!?」
「壊す気なんてない。俺はこれからもこの世界で生きていく」
「貴様の望みが少しでも歪めば容易く壊れるぞ。それが分かっているのか?」
「歪みなんかしない。俺の願いは決して
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