Page2:吹雪舞う北の地にて
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即ち『革命』だ。
ただし、最近郊外で力を伸ばし続けている革命軍とは別口だが。
自警団の目的は今の国家体制を覆すことではない。
革命軍の目指す革命は、『帝国』という国家そのものを一度解体し、一から作り直すことである。
それ即ち、愛した国を滅ぼすということ。それは、自警団に所属する者にとって許されざることであった。
帝都自警団は言い換えてしまえば、愛国者集団である。
この国を愛し、この国を護る。その為にアレン・グランソニックによって組織され、日々戦いに暮れている。
故に、彼らが辿り着いたのは政治家の刷新である。国家という外側を変えずに、腐った大臣や内政官を根刮ぎ消し、新たな良識派の政治家を据える。つまり、内側の革命だ。
今現在は帝都に巣食う膿の排除の最中。そして、最近大臣にマークされ始めた為、戦力増強の目的でこの凍土に足を踏み入れている。
そんな帝都自警団には、ある一つの絶対原則が存在する。
それ即ち『人殺等悪』の心得。
人を殺さば皆等しく悪である。
かつて偽りの正義を盲信し、悪と断じた者を殺して回っていたセリューにとって、この教えは自らの信条を叩き折られる程の衝撃だった。
それ以来、その教えを説いたアレンの元へセリューは通い詰めることとなる。初めは反発。自らの信条を否定する彼を、親の仇のように憎く思っていた。だが、一月二月と彼と関わっていく内に、徐々にその教えを受け入れ始め、半年経つ頃には自らの信条を書き換えていた。
故に。今セリューがこの北の大地で行っている行為は、誰が何と言おうと『悪』そのものなのだ。
セリュー自身、悪を背負う覚悟はできていたはずだが。いかんせん、今回のそれは数が多すぎた。
悪を犯し続けている罪悪感に、彼女の判断力が鈍る。
「しまっ……!」
帝国兵の剣先が擦り、脇腹に細い線が入る。慌ててトンファーを構えるが、もう遅い。
戦争に於いて一瞬の油断は命取りである。今回彼女は、それを身を以て味わうこととなった。
帝国兵の剣が高々と振り上げられている。もう大した間も置かずに、この身はあの血に染まった剣に切り裂かれ、剣のシミの一つとなるのだろう。
死ぬのならば、せめて気高く。絶対に目を逸らさないと顔を上げた刹那。
「邪魔だ」
大空を舞う竜王の一撃が、帝国兵を弾き飛ばしていた。
「隊長!無事だったんですね…!」
「心配かけた。なんとかエスデスを退かせることはできたが、時間がない。こちらも本陣にいる敵を掃討した後、生き残りの北方異民族を連れて後退するぞ」
「了解です!」
炎翼を消し去り、北の大地に再び足をつく。虚空に現れた竜剣を右手で掴み取り、背中をセリューに預ける。
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