Page2:吹雪舞う北の地にて
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ルで蹴られた腹部を押さえて後退しつつも、青年は反撃を行う。
「セァッ!」
心臓目掛けて突き込まれる切っ先を下段から切り上げ、左回転の遠心力を加えた上段薙ぎ払い。
屈んで躱したエスデスを、先程のお返しとばかりに力任せに蹴り飛ばした。
「フッ、やるではないか」
「くっ、はぁ、はぁ……」
久々に骨のある相手を見つけることができて嬉しそうな表情のエスデスに対して、青年の顔には疲労の色が滲んでいた。
(これまでコロナ三回に、擬似火山噴火一回…クソ、消耗しすぎたな)
例えその帝具が強力無比な力を持っていようと、必ず限界は訪れる。当然、大技を連発した青年の体力や気力は言わずもがな、今では剣を構えるのがやっとの状態だ。
「ふむ、どうやら疲労が溜まっているようだな。今の状態の貴様と戦っても、これ以上は楽しくなさそうだ」
「…なん、だと…?」
「私は好物は後にとっておく質なのでな。ほら、見逃してやるから何処へでも行ってなにをでも為すがいいさ」
疲労した中でも爛々と輝く蒼い瞳がエスデスを睨みつける。
俺はまだやれるぞと、強烈な意思が全身から立ち昇り、それが炎となって噴き出す。
「ならば言葉を変えよう。今のお前とやってもつまらん。見逃してやるから、どこへなりとも行くがいい」
「なめ…っ、クソッ」
ナメるな、と言おうとしたのだろうが、しかしそれは持ち前の冷静さで自制が間に合った。
そうだ、当初の目的はエスデスと戦うことではなくヌマ・セイカの保護。それを達成するための足止めとしてエスデスと戦っていただけなのだ。
目的を見誤るな。生きて帰る事が第一条件なのだ。
「…そうさせてもらう。だが覚えていろ、お前を殺すのは俺だ」
蒼い瞳は正に竜王の眼光。十字に変形した瞳孔は、睨まれた者全てを恐怖に陥れる零度の威力を孕んでいた。だが、それすらも氷の女王の前には無力。
「できるものならな。楽しみにしているぞ、アレン」
これ程の殺意を向けられれば、戦闘狂の彼女の本能は自然と昂ぶる。身体の奥から熱く溢れ出す欲を凶悪な笑みに押し込めて、氷の女王は去りゆく竜王の背中を見つめた。
† ☆ †
「セヤァッ!」
この北の大地に足を踏み入れてから、一体どれだけこの腕を振り抜いただろうか。
既に本陣まで攻め込まれた北方異民族に加勢し、帝国兵を次々と撲殺しながらセリューは思う。
いつも隊長のアレンらと共に鍛えているお陰か、体力や筋力に疲労は感じられない。むしろ、今になってやっとギアが上がってきたところだ。
だが、精神力はそうはいかない。
帝都自警団。
それがセリューが所属する組織の名である。この組織の目的は祖国の救済。
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