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帝都自警団録
Page2:吹雪舞う北の地にて
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刃となって青年を襲った。

「チッ…!」

 忌々しげに舌打ちを漏らし、青年は意識を足止めから迎撃へ向けた。
地面から噴き出る炎がなりを潜め、代わりに先程よりも高温の熱風が帝国軍を襲う。
 
 しかしそれは将軍から発せられる冷気により相殺されてしまう。放たれた氷刃は全て溶かしきることができたが、帝国軍の約半数は既に青年の後ろだ。

「さて、楽しもうじゃないか!」

 馬を降りた将軍が、氷刃と共に突進してくる。
 舌打ちを漏らしつつも、頭はフル回転を始めこの状況を打破する最良を見つけ出す。

「コロナ!」

 今回の作戦の目的は北方異民族の英雄ヌマ・セイカの保護と、エスデス軍を可能な限り消耗させることである。
 今、彼の後ろを行くエスデス軍を見逃せば、良くて作戦失敗。最悪の場合は、大事な副官を失いかねない。

 それはダメだと断言する。
 故に青年は、先程よりも数を増した剣軍を自分に背を向け馬を駆るエスデス軍へ振り下ろした。

 響くのは苦悶の悲鳴。肉を焼く音、匂い。舞い散る血液。その地獄のような光景に青年は苦渋の表情を浮かべ、女将軍は喜びの笑みを浮かべる。

「素晴らしい。素晴らしいぞ! 貴様、名はなんという!?」

「……アレン・グランソニック」

 凄惨な光景に胸を痛めつつ、青年は剣を薙ぎ払う。放射された火炎が氷の刃を余さず溶かし尽くしたのを確認せず、前へと駆け出す。
 煙を割いて突き込まれるレイピアを、剣の腹で受け止める。

「アレンか。覚えておこう」

「別に結構だ。アンタとは余り関わりたくない」

「連れないやつだ」

 互いに剣を引いて距離をとる。両者に既に会話を続けるつもりはない。これから行われるのは混じり気のない純粋な殺し合いだ。言葉など無粋である。

「ドラグレイド」

 剣から炎が溢れ出す。全てを焼き尽くす灼熱すらも力に変えて、青年は疾走を開始した。

 炎の逆噴射による推進力を伴って突貫してくる強敵に、しかしエスデスは余裕を持って迎え撃った。

 炎を吹き出す剣と冷気を纏うレイピアが衝突する。熱気と冷気が互いを打ち消し合いながら、白い蒸気を上げて視界を悪くする。

 しかし二人はそんなことを歯牙にもかけず、相手の命を奪うために剣を振るい続けた。

 片や苦痛にその表情を歪め、片や歓喜にその表情を輝かせ。
 胸に秘める思いが違うからこそ、その二人は対称的な位置に立っていた。

「ハァッ!」

 落下の勢いに乗せた斬撃が、氷の剣によって阻まれる。溶かし斬った剣の向こうから突き上げてくるレイピアを体を捻って躱し、着地と同時に体を反転させ脚を刈り取ろうと剣を振る。

 だが、それよりも早くエスデスの長い脚が青年の腹を蹴り飛ばした。ヒー
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