Page2:吹雪舞う北の地にて
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
らと言って、俺がここで逃げる訳にもいかない……来い、帝国軍。貴様らの軟弱さ、この剣でその身に叩き込んでやる」
再び、今度は先ほどよりも倍近くの火剣を空中に停滞させる。切っ先は全て、これから来るであろう敵の一団に向けてある。
† ☆ †
「ほう、中々壮観な出迎えだな」
こちらにその切っ先を向ける炎の剣軍を見て、年若き女将軍は感嘆の声を上げた。これ程の荒技、帝具の補助だけではなく使用者の技量、精神力も並ではないだろう。
「エスデス様、如何致しましょう」
「お前達はなにも気にせず進めばいい」
さて、帝国軍に切っ先を向ける莫迦者は一体どんな奴なのか。
馬を走らせ進めば、そこには一人の青年が立っていた。
「ほう…」
倒れ伏す死体はどれもが帝国軍のもの。恐らくは最前線にいた部隊の一部だろう。
それを、この青年は一人で殺し尽くしたというのだ。
血が騒ぐのを感じた。これ程の使い手、そうそういないだろう。いや、下手をすればこの世に二人といまい。
炎の剣軍が震えだす。もうすぐにアレは降り注ぐだろう。死は免れない。間も無く、あそこに転がっている多くの死体の仲間入りを果たすのだろう。
ただ一つ、例外がなければ。
「如何に灼熱の剣軍といえど…」
前を走る女将軍が言葉を紡ぐ。肌を突き刺す冷気が、更に鋭さを増した。
「死ね」
死神の一振りの如く、青年の振り下ろされた手に従い、炎の剣軍が純白の空から飛来した。
「私の前では全てが凍る!」
絶対零度の波動が空間を伝播した。存在するもの全てを凍てつかせる氷の波動は、例外なく、炎の剣軍の全てを凍らし尽くした。
大軍から歓声が上がる。それは正に勝利を確信した咆哮。
しかし、その声はすぐに止むことになる。
「ドラグレイド、俺に力を…!」
前方からの熱風で、降り積もっていた雪全てが瞬時に溶け去った。
その余りの熱量に、馬が足を止める。
「なるほど、素晴らしい。まだ若いにも関わらず、そこまで帝具を使い熟すか」
かつてない程に血が滾る。ここまで最上の獲物にこれまで巡り会えたことがあっただろうか。ブドー大将軍を初めて見たときも興奮したが、今回のはソレを上回る。
「面白い。ここは私が受け持とう。お前達は先へ進め」
「ハッ!」
これ程の獲物を奪われてたまるものか。この男は私のモノだ。
そう言わんばかりの眼光に気圧され、そして帝国軍は馬を青年の背後にある城塞へ向けた。
「行かせるとでも?」
しかし、灼熱の業火が地面を割って噴き出てその道を塞ぐ。
「ああ、通させてもらおう」
対するは全てを凍らせる零度の波動。その全てが鋭利な
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ