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帝都自警団録
Page2:吹雪舞う北の地にて
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の拳は、敬愛する団長を後ろから刺そうとしていた愚か者の顎を捉え、そして追撃である脳天への一撃を以って絶命させた。

 一瞬を以って仲間が二人殺された。それを見ていた帝国軍に動揺が走るが、流石は最前線で戦う猛者たちと言った所か。その動揺は伝播することなく、自然に消えていった。代わりに、銃口が二人へ向けられる。幾ら対人戦に優れていようと、銃の集中砲火には耐えられまいと考えてのことだった。

「重火器は邪魔だな。早々に壊れてもらおうか」

 しかし侮ることなかれ。ここに立つは竜王の権化なり。銃弾如きに遅れをとることはない。
 右手を空へ向ける。すると、信じられない光景が曇天を覆っていた。
 帝国軍へ向けられたのは、炎で形作られた剣軍の切っ先。その剣の数、実に数百本。

「コロナ」

 それはさながら死刑宣告のよう。
 頭上から自分達へ振り下ろされた手に従って、死の断頭台も降ろされる。


「ああ……」

 これ程の量の剣軍を一体どうしろというのだろうか。数え切れぬ程の火の剣が明らかな殺意を以って放たれるのだ。防げるはずもない。

「死ね」

 それは一方的な蹂躙であった。凄まじい速度で放たれた灼熱の剣軍は正に必殺の一撃。
 どう足掻こうが、どこに逃げようが火の剣は主人の敵となるモノ全てを刺し貫いていく。

 やがて生成されていた火の剣が尽きる頃、青年の前には物言わぬ死体しかなかった。降り積もった雪すら火剣の熱によって溶かされ、長年雪の下にあった地面が顔を覗かせている。

 その様を見て、青年の体が崩れ落ちる。それを抱きとめるセリュー。

「…大丈夫ですか?」

「…ああ。だが俺が生み出したとはいえこの光景は、少々堪える」

 心配そうに覗き込むセリューが見た彼の顔は、目に分かる程に青褪めていた。
 だが、それは仕方のない事だろう。彼が一方的に作り出したとはいえ、この光景を見てなんの反応も示さなかったらソレは狂人の類だ。
 
 だが彼は正常にその光景を異常だと捉えている。だからこそ、皆がこの人についていくのだ。
 正しきを正しきと、悪を悪だと私情を挟まずに審判できる。その様を保つ事が、この国ではどんなに難しい事か。

 もしかしたらセリュー自身も、彼と出会わなければ間違った正義を抱いたまま悪を犯し続けていたかもしれない。

「……足音が近づいてきたな。予想より早い御到着だ」

 アレンの言う通り、幾つもの馬の馬蹄が雪の地面を蹴る音が聞こえてくる。

「セリューは作戦通り、異民族の本陣へ向かいヌマ・セイカの保護を頼む」

「了解!」

 敬礼をし、馬に跨った部下を見やり青年は息を吐き出す。
 死ぬかもしれない。今から自分が見える人間は、それ程危険な人物だ。

「だか
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