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東京百物語
赤い手青い手
四本目★
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輪っかを作る。



「あ、もしもし、・・・セイ?」



 そう言いながら席を立つ日紅。残された四人は思わず目を見合わせた。日紅は今確かに「セイ」と言った。先ほどの怖い話もすっかり忘れて皆で額を付き合わせる。



「・・・ねぇ、セイってさ・・・」



「・・・前川も思った?」



「そりゃ、みんな気になるでしょ。セイって・・・よくさ、山下が青山くんのことそう呼んでるよね」 



 青山清とは言わずと知れた学校中のアイドルだ。



「青山くんと山下仲良いよね・・・」



「同じ高校出身だ、って言ってもさ・・・なんかそれだけじゃない気がするよね・・・」



 みんなでさほど離れていないところで電話をしている日紅をじいっと見つめる。



「・・・うん、うん・・・ええー?うん。大人しくしてるってば!ヤダもーセイ、あたしのことを何だと・・・」



 盗み聞きするわけではないが、声もはっきりと聞こえてくる。大分砕けた口調で、日紅と「セイ」はとても親しい仲なのだと明らかにわかる。



「ええっ!?む、無理無理無理!ここどこだと思ってるの!?バカ!バカセイ!え!はぁ?う、うう〜・・・。わ、かった・・・一回だけだよ!もう絶対絶対絶対言わないからね!?・・・好き、だよ」



 駆け戻ってきた日紅の頬は赤かった。暑くもない日なのにパタパタと顔を手団扇で扇いでいる。



「ううわっ!?ど、どうしたの、みんな暗っ!」



 どよーんとした席に気づき日紅は声を上げる。青山に密かに憧れていた三人は屍と化していた。四人のうち、彼氏がいる藤原だけが困ったような顔で笑っていた。



「山下二等兵!」



「は、はいっ!」



 突如机を叩いて立ち上がった坂田に驚いた日紅は思わず隣の藤原に抱きつく。



「貴様、彼氏がいるのか!」



「は、はい上官(イエス、サー)!・・・おります」



「いる、だと・・・!」



 坂田は机についた手を震わせた。



「では聞く。その彼氏は『セイ』という名前で間違いは無いか!」



「えっなんで知って・・・い、いえす、さー・・・」



 ぎっと睨まれて日紅はさらに強く藤原に抱きつく。



「イエスと言ったか、今!山下二等兵、今日から貴様を敵と見なす!」



「え、ええーっ!なんで・・・」



「上官に意見するな!なんでもくそもない!自分の胸に手を当てて良く考えてみろ!みんなのアイドルを奪った罪は重い!軍法会議ッ、軍法会議ものだぞ!」



「坂田中尉殿!」



 不意に
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