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東京百物語
赤い手青い手
四本目★
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 食堂でパスタを囲みながら、日紅(ひべに)が女子五人と共にお昼ご飯を食べていた時だった。



「そういえば、山下ってすんごい怖がりだけど、お化けって見たことないの?」



 唐突に坂田がそう口火を切ったのである。水を向けられた日紅は、露骨に怯えた顔をした。



「ええ!?なに、イキナリ!怖い話やめようよー」



「怖い話じゃなくて、お化け見たことあるかないか聞いただけでしょ?」



 坂田は呆れたようにフォークを顔の横で降る。



「ううう、ない。・・・くもない、かも。ううん、やっぱない!」



「どっち」



「うう〜・・・あるといえば、ある・・・かなぁ。でもでも本当にちっちゃい頃だったから、夢なのか現実なのか、よくわかんないんだけど・・・」



 山下日紅は田舎の県から大学で東京に出てきた。生まれ故郷は自然が豊かで、幼い頃は隣家の大木に登って遊んだりした。だから通ったのも教育が目的の幼稚園ではなく、子供を預かる目的の保育所だったりした。



 それはその小さな保育所で起こった。ある日、日紅は教室の隅で遊んでいた。すると、ヤンチャな男の子の三人組が日紅の腕を引いた。



『おい、あっちにコウモリがいるぞ!』



『え、どっち?』



 コウモリという言葉に惹かれて日紅は立ち上がった。小さい頃の日紅は好奇心が強く物怖じしない性格だった。



『こっちだ、こっち』



 連れて行かれたのは教室と直結している物置だった。二畳ほどの広さで、物置と銘打つだけあって、そこに空箱やらバドミントンの羽やらボールやらが無造作に詰め込まれているだけの場所だった。しかしあまり好きこのんで自分から入るような子供はいなかった。理由は簡単だ。物置の上に二階に続く階段があるおかげで天井は斜を描き、奥に進めば進むほど暗く狭くなっていくのが小さい子供にとっては単純に恐怖の対象だったからだ。



 しかし好奇心でいっぱいの日紅は躊躇無くその物置に飛び込んできょろきょろとコウモリをさがした。多分上を飛んでいるのではと天井近くをよくよく見ていた。けれど生き物らしきものはどこにもいない。



『いないよ、どこ?』



『さっきはいたんだけどなァ・・・もっと奥かも』



 そう言われて日紅は更に置くまで進んだが、やっぱり見当たらない。



『ねぇ、どこ・・・』



『あはは、騙されてやがんの!コウモリなんていねーよ、バーカ!』



 日紅は振り返った。男の子達の笑い声が足音と共に遠ざかっていく。そうだ、そもそも男の子達は外から声をかけるだけで物置の中にすら入ってきていなかった。日紅は
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