第二話
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新暦70年4月 海鳴市 喫茶翠屋 店内
Side アリサ・バニングス
「遥〜、アタシの誘いをドタキャンするとはいい度胸ね〜」
「それ、今いない人に言ってもしょうがないでしょ」
思わず出たアタシの言葉に、菜々星が冷静にツッコミを入れる。
分ってはいる。分ってはいるのだが、どうしてもそう言わずにはいられない。
放課後、ホームルームが終わり早速皆で翠屋に向かおうとした後ろを振り向いた時には、もうすでに遥の姿はなく直後に鳴った携帯───当然、校内での携帯電話の使用は禁じられているのでマナーモード───を確認すれば、遥からのメールが一件。
『急なバイトが入った…………ゴメン』
なぁッ!?
と驚いて教室の窓から外を見れば、菜々星がかなり早い速度で校門向かって走っているのが見えた。二階のウチのクラスからもうあそこまで!?と驚いている内に気がつけば遥の姿はなく、あまりの出来事に唖然としてしまった。
そんな訳で今現在、アタシは、すずかと菜々星の三人で翠屋のテーブル席でケーキセットを注文したのだが、ケーキが来るのを待っている内に段々と遥に対する怒りが込み上げてきたのである。
「ふふふ、明日会ったらどうしてくれようかしら〜」
「今回はフォロー出来そうにないわね」
「あれ?菜々星ちゃんが遥ちゃんをフォローした事あったっけ?」
「……最近気づいたんだけど、私たちの中で一番黒いのすずかだと思うわ」
そんなことないよー!と抗議の声をあげるすずかに、菜々星はすまし顔でコーヒーをすすって沈黙する。すずかが若干目を潤ませながらこちらを向いてきたので、アタシもノーコメントということで窓の外へと視線を外す。そんな親友二人の様子にすずかはガーンとショックを受けたような顔をして、うう〜ひどいよ二人とも〜、と落ち込み両手でグラスを持ってアイスティーをすすりはじめた。まぁすずかに関しては置いておいて、
「それにしても急なバイトって、遥、そんなにお金に困ってるのかしら?」
「一人暮らしらしいから、あの子」
「はぁ!?初耳よアタシ!」
「私も初めて聞いた」
すずかも驚いて顔をあげる。
遥との付き合いは中学に上がってからだ。他の五人に比べれば少ないとは言え、もう一年近い交流を続けている。それなのに今日の今日まで知らなかったのは色々な意味でショックだ。
「私も知ったのはついこの間。羽交い絞めにして聞き出した」
「アンタ何して……いつもの事か」
「いつもの事だね」
相変わらずな二人にアタシとすずかは短息する。
そうか、お弁当も趣味で作り始めたと言っていたにしては何時まで経っても雑だなと思っていたが、そういう事情があるなら納得できる。……たぶん趣味でなく必要にかられて始めたのだろう。
「ったく、どうしてそう
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