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真田十勇士
巻ノ五 三好清海入道その十三

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「それでこれから信濃に行くでありんす」
「信濃か」
「それで木曽に」
「そうか、実は拙者達は信濃の生まれでな」
「そういえば言葉の訛りがそちらでありんすな」
「わかるか」
「それも上田の」
 人形は笑って幸村に話した。
「あちらですな」
「そうじゃ、それで御主は木曽に行くのじゃな」
「そうであありんす」
「わかった、木曽は山が深く獣も多い」
 幸村は人形を気遣い彼女にこのことを話した。
「そこには気をつけてな」
「随分細かいことまで教えて下さるでありんすな」
「そうか」
「あい、お優しい方でありんすな」
「これ位はな」
 幸村にとってはだ。
「普通だと思うが」
「いやいや、世の中そうではないでありんすよ」
「教えぬ者もおるか」
「それが普通でありんす、ではまた縁があれば」
「うむ、会おうぞ」 
 幸村は笑って人形に応えた、そしてだった。 
 人形と入れ違いに別れてだ、幸村はそのまま岐阜に向かった。清海はその道中で幸村にこう言った。
「よきおなごでしたがどうも」
「怪しいか」
「そんな気がしました」
「そもそも女一人旅じゃ」
「しかもあれだけ美しいおなごが」
「それをしておるとなるとな」
「怪しいですな」
 清海は幸村に言った。
「やはり」
「うむ、しかし拙者に来る者は十人か」
 その占いことをだ、幸村は自分から言った。
「ではあと六人か」
「では我等は」
「その十人のうちの四人と」
「そう言って頂けますか」
「そう思う、拙者はな」 
 幸村は穴山達に答えた。
「ではあと六人をな」
「探しに参りますか」
「このまま」
 四人も応える、こうした話もしつつ幸村は岐阜に向かい今度は根津甚八に会うのだった。


巻ノ五   完


                               2015・5・8
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