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アンジュラスの鐘
9部分:第九章
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第九章

「そのかわり、炎天下で水もまともにないですよ」
「何、覚悟のうえですよ」
 神父は笑ってまた言った。
「でははじめますか」
「ええ」
 老人も笑顔で返した。そして人を呼びスコップとツルハシでその廃墟の中にあるものを掘り出しにかかった。少し掘り出すと中から黒いものがさらに見えてきた。
「あれ、これって」
 集められた人々は十人程であった。その中の一人がその中のものを見て声をあげた。
「どうしました?」
「これってやけに大きいみたいですよ」
「大きいですか」
「はい、教会にこんな大きい金属なんてありましたかね」
「どっかから飛んで来たんじゃないのか?」
 別の若い男がそれに応えた。
「とんでもない爆風だったからな」
「それでかな」
「ああ、それでも掘り出そうぜ」
「こうなったら乗りかかった船だからな」
「そうだな、それじゃあ」
「これだけいればあっという間だしな」
「よし」
 神父と老人、そして若者達はそれを掘っていった。次第にその大きさも形もわかってきた。その形を確かめていくうちに神父の顔が徐々に変わってきた。
「これはまさか」
「どうしました?」
 隣にいた老人が神父に尋ねた。
「ここにあった教会は完全に壊れてしまったのですよね」
「その結果がここですよ」
「はい、そうですよね」
 もうそれは言うまでもないことであった。だが今ここにあるのは。その壊れてしまった筈のものであったのだ。なくなってしまった筈のものだったのだ。
「けどこれは」
「これってまさか」
「ああ、ひょっとしたら」
 周りの者もそれに気付きだした。廃墟の中にあったのが何であったのか。
「神父様」
 そして神父に声をかけた。
「ええ、わかってますよ」
 神父は笑顔になっていた。ここ数年誰にも見せたことのない程の晴れやかな笑顔になっていた。顔中に汗を流してはいても。晴れやかな笑顔になっていた。
「若しかしたら」
「そうですよね」
「あんなことがあったのに」
 彼等も心が沸いていくのを感じていた。それはあの沈んでいた老人も同じであった。
「まさかとは思いますがね」
 そうは言いながらも晴れやかな笑顔になっていた。
「あの爆弾を受けて」
「そうですよね、若しかしたらですが」
 そうは言いながらも皆の手の動きは速くなっていた。一刻も早くそれを取り出したくなっていた。
「あの中で奇跡が」
「はい、奇跡が」
「あったのかも知れませんよ。本当に若しかしてですけど」
「この中に」
「あれが」
 皆心を弾ませてきていた。そしてスコップにツルハシを動かす。夕刻になりもうすぐ陽が落ちそうになっていた時であった。彼等は遂にそれを取り出したのであった。
「出たぞ」
「遂に」
 彼等はそれを見た。それ
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