狂乱者−バーサーカー−part1/闇に誘われる少年
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に分かれて国が対立している。そのせいで秩序が乱れる一方にあった。本来秩序を守っていた貴族の仲から氾濫分子が発生し、それを防ごうと王党派が躍起になっている。その間に無関係の民たちが、同じく政府とは無関係の悪党たちの犯罪をみすみす見逃すことになり、国はそれを支える貴族たちの知らないところでさらに乱れていく。
その少年は、物心がついたときから一人だった。名前を持たず、住む家も持たず、浮浪者といってもなんら間違いではなかった。ただ生きている。生きるためには食べ物が必要だった。しかし少年はお金を当然ながら持っていなかった。それに見た目からして貧乏臭すぎる上に教養を何一つ学んでこなかった少年を、同じ平民でさえも雇いたがらないからお金を1ドニエも手に入れられない。
だから食べ物を手に入れるには、盗むしかなかった。もちろん何度も捕まってはその度に、彼に食料を盗まれた店の主から酷い仕打ちを受けることになった。ちょっとくらいいいじゃないか。こっちなんか生きる術といったら食べ物を盗むくらいしかできないのだ。それなのに自分がこんな仕打ちをどうしてされなければならない。
理解できない。ただわかるのは、理不尽な現実を押し付けてくる大人たちに対する怒りが募っていくことだけだった。大人たちがしっかりしていれば自分がこうなることはなかった。それは事実その通りと言えなくも無かった。貴族たちは二派に分かれ自分たちの権力闘争にばかり集中し、平民の大人だって乱れていく国の中で自分たちが生き残る方に必死で、自分みたいな弱い立場の子供のことなど気にもかけない。教育の機会を得られなかった少年だったが、それでも国のことを学びつつあった。
大人が身勝手で、自己中心的だ…と。
大人は信用しない。誰も信じない。だから一人で生きることを決めた。
だがある日、少年に転機が訪れた。
その日、少年はあるパン屋からパンを盗もうと店の中に忍び込んだ。そしていつもどおりパンを盗み出してやった。いつしか盗みそのものが楽しみに思えてきていた。大嫌いな大人たちのあわてふためき、こちらに向けて怒りや顔がたまらなくなっていた。
追いかけてきている大人の喚く姿は甘美に思えていた。しかし、流石にここまでのレベルになって来ると、現実はなけなしの譲歩さえも与えてくれなくなった。
前を見ていなかった少年は、ある者にぶつかってしまう。なんだよ、といらだって顔を見上げると、自分がぶつかった相手は、とあるアルビオン貴族の当主だった。トリステインにもコルベールやオスマンのような身分差別などしない模範的な貴族もいれば、モット伯爵やチュレンヌのような貴族の風上にも置けない愚か者もいる。アルビオンにもそれは同様で、運が悪いことに少年がぶつかった相手は、後者だった。誰でも相手とぶつかったりその拍子に服を汚されたら怒りたくもなるが、その貴族は悪辣
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