5部分:第五章
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顔が段々暗くなってきていた。
「まさか」
「鐘、危ういかも知れんのう」
「いえ、それは」
「とりあえず。今はまだ話が多く入ってきておらん」
「詳しいことはそれからか」
「長崎が・・・・・・」
「気を落とすでないぞ」
「よいな」
神主と僧侶は狼狽さえ見せる神父に対して声をかけた。
「え、ええ」
神父もそれに応えるが顔色はどうしても悪かった。
「わかってます」
「だが若しかしたら」
「広島みたいにか」
「うむ、その新型爆弾でな」
「なくなったかも知れんな」
「一発の爆弾で街が消し飛ぶなんて有り得るのでしょうか」
「わからん。だがもしそれが本当だとしたら」
神主は溜息を吐き出しながら言った。
「世の中、恐ろしいことになるのかもな」
「はあ」
この日もそれから暫くも彼等は暗くなったままであった。それが晴れることはなかった。ソ連が参戦し、満州が蹂躙されているという話も、空襲の話も。全て彼等を暗くさせるのであった。
そして遂にこの日が来た。八月一五日。その日の正午、日本の時間は止まってしまった。
「負けたのか・・・・・・」
それを聞いて多くの者が泣いた。
「日本が・・・・・・」
「遂に・・・・・・」
天皇陛下の玉音放送が聴こえてくる。それを聞いて皆泣いた。心から泣いた。
「もう何も言いたくはないわ」
三人は寺の境内にいた。そして肩を落として本尊の前で座り込んでいた。
僧侶の寺は不動明王を本尊とする。それを前にして座り込んでいる。もう立ち上がる気力もないようであった。そこまで失意していたのであった。
「負けたな」
「はい」
神父は僧侶の言葉に頷いた。
「何もかも。終わったわ」
「大東亜の大義もな」
「全て終わりじゃ。何もかものうなってしもうたわ」
「そうでしょうか」
「長崎のことはもう聞いておるじゃろ」
神主が神父に対して言った。
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