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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
17話 見えていなかったもの
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だろうな」
「どうしてアルゴさんに言わなかったのかな?」
「それは………何でだ?」


 言われてみれば、確かに釈然としない。
 情報を有料で提供している節は見られなかった事から、被害者こと重装備プレイヤーは事実、無償で注意喚起を行っていたことになる。しかし、どうせ無償であるならば情報を口頭で広めるよりも、いっその事アルゴに提供した方が遥かに効率的に他のプレイヤーに伝播するだろう。街でも噂程度に耳に入らなかったという点さえも気味が悪い。重装備プレイヤーの目的に対して情報の拡散が芳しくない。むしろ戸を閉ざしたかのように広まらないくらいだ。


「リンちゃん、戻ったゾ!」


 アルゴには珍しい怒声が室内を震わせ、乱暴にドアが閉じられる。やや気圧されるヒヨリの脇を過ぎて、気に入ったのか揺り椅子に荒々しく腰掛ける。普段の様子とはだいぶ違う印象だ。


「あ、アルゴさん? ………どうしたの?」
「ン? ………ああ、ゴメンネ。驚かせちゃったカナ? リンちゃん借りてくケド、良いカナ?」


 丁寧に場所を変えて情報交換をしようというらしい。だが、その必要は今しがた解消されたところだ。


「ここでいい。ヒヨリには話したからな」
「ニャニィ!? ヒヨリちゃんの聖女の如き清らかな心にえげつない爆弾投下して、リンちゃんは良心の呵責ってモンがないのカイ!? だから厨二忍者なんダヨ! 汚イ! 流石ニンジャ汚イ! ばっちい!! このなんちゃって風魔忍軍!!」


 俺とヒヨリでこれほどに扱いの差があったのか。厨二は関係ないだろうに。というか風魔忍軍ってなんだ?


「アルゴさんやめて、私がお願いして聞いたんだから」
「そうなのカ?」
「そんなところだ」


 なら仕方ないと勝手に締めくくり、アルゴは懐からメモ帳を取り出す。その一冊に一体いくらの情報が書き記されているのか気になるものの、同時に恐ろしくて、気軽に聞くのも憚られる。そんな心境など知る由もなく、アルゴは手帳のページを開く。


「まず、エルフを呼ぶギミックが噂にもならずに潜んでいた仕掛けだケド、追加取材で突き止めてやったゾ」
「あ、私も気になってた!」
「そーか、ヒヨリちゃんは偉いナー」
「えへへー」


 さっきまで苛立っていた筈なのに、落ち着くのが異様に早い。というより、ヒヨリに対しては既に孫か何かのような扱いに見える。


「撫でるのは良いが、話を進めてくれ」
「ンー? リンちゃん、もしかしてオネーサンに構ってもらえなくてヤキモチ妬いちゃったかニャーン? それとも、ヒヨリちゃん取られちゃったと思ってヤキモチ妬いちゃったのかナー?」
「寝てないからイラついてんだよ早くしろ」
「………じゃ、じゃあ、本題ダナ。情報を提供された
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