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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
17話 見えていなかったもの
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。第一層の主街区たるはじまりの街での一幕を、想起する。
 俺の行為は、結局として自己満足だったのかも知れない。ヒヨリの為にと思っていた行為は、ヒヨリの決意を侮辱していた。まるで自分だけが戦っているつもりになっているようで、ひどく情けない。こんな事、もうはじまりの街を出る時に理解していた筈だったのに。
 だが、それを間違いだとも思わない。俺はただ、俺なりにヒヨリを守り、救い出すしか出来ないのだから。その手段が如何なるものであったとしてもだ。だが、当人からの申し出であったならば、自ら考えて至った答えであるならば、それを尊重しない道理はないのもまた事実。


「………多分、俺達が頑張ったところで誰も救われない。そういう意味ではもう、これは手遅れになってしまっている。それでも聞くか?」


 ただ、これだけは認識してもらいたい。誰かの為に行動を起こすのは、今回に限っては悪手だという事を。目的を見誤って暴走しては、手痛い目を見る。


「うん、教えて………!」
「………分かった」


 頷き、ヒヨリにこれまでの経緯を話す。
 迷い霧の森にて、エルフを周囲から呼び寄せるモンスター限定の特殊スキルがプレイヤーによって確認された事。
 その特殊スキルは、アルゴが著している攻略本にも載っていない未知のスキルであった事。
 その特殊スキルによって増大したエルフの群れと交戦した結果、先日助けたPTから犠牲者が出てしまっていた事。
 その手掛かりとしてレアエルフを捜索し、ティルネルを発見するに至った事。
 その後の情報収集で、俺は昨日の犠牲者の在席していたPTの他にも被害者が存在していた点に行き着いた事。
 また、アルゴは先の特殊スキルに類似する複数の目撃情報を入手し、その全てにおいて目撃者が全て同一の特徴であった事。
 それらの情報を、決して婉曲な言い回しにせず直接的に伝えた。当初は不安であったものの、俺の考え過ぎであったらしい。ヒヨリにしては、話によく耳を傾けてくれていた。正直、ヒヨリを信じないで侮った事はもう何度目になるかわからない。全く、我ながら学習能力のないものだ。


「そっか、あの子達、そんな事あったんだね………」
「可哀想かも知れないけど、俺達には何も出来ない。向こうの問題だからな」
「解ってる………でも、やっぱりおかしいよ?」
「どうした?」


 一頻り話を聞き終えたヒヨリは、難しい顔をしながら首を傾げる。どうにも納得出来ないというような風情だ。


「だって、攻略本を作ってるのはアルゴさんだって、みんな知ってるんだよね?」
「………タイトルからして、だからな」
「だったら、その被害者さんは他の誰かに話して教えてあげるよりも、アルゴさんに伝えた方が早いんじゃないのかな?」
「まあ、そうなる
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