第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
17話 見えていなかったもの
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件について、これから話すことについて、誰も憐れまないと約束してくれ。そうしたら話す」
「どういう事?」
「割り切って話を聞いてくれって事だ。情報程度に受け取ってくれれば問題ない」
「そんなの、聞く前から言われても………」
「解ってくれ。じゃないと、俺だって安心して話も出来ない」
不愉快そうな表情だ。間違いなく納得してくれていないだろうが、この場においては納得出来るか否かは問題ではない。これから先、俺達と関わりを持った誰かの死を深く考えすぎて重荷にしてしまうようならば、この話は聞かせるわけにはいかない。その為に後先考えず奔走されては、自分の首さえ絞めかねない急所となる。
俺だって、アルゴに義理立てしているのはあくまでも攻略本の欠落箇所の補完までだ。それでも、犠牲者が続出して攻略が停滞しかねない重大な案件でなければ、見向きもしなかっただろう。つまりは《一刻も早くヒヨリを元に戻してやりたい》から、この状況が俺にとって都合が悪い為だ。そう考えると、利己的な自分に嫌気がさしてくる。それでも、ヒヨリには自ら死地に赴くような真似は出来る限り避けてほしい。誰かの死に感傷的になって行動してほしくない。しかし、何故だろうか。視線を落とすヒヨリを見ていると、これまでの方針に、何か言い知れない間違いがあったような、そんな気がしてくる。
「危ない事、してるの?」
「危険だろうな。だから、出来れば関わらせたくはなかった。ただ、ヒヨリから聞かれれば話そうとも思ってたのは事実だ」
「………じゃあ、私がその事を知らなかったのは、燐ちゃん達がそうしたかったからなの?」
「少なくとも、俺から知らせようとはしなかった」
「………私のこと、頼ってくれないの?」
「………………」
返す言葉が見つからない。頼っていなかったのは事実だ。だが、頼ってしまうと関わらせてしまう。そうなった時、レイ達の身に起きた悲劇を知った時、ヒヨリは間違いなく彼女達の為に動き出す。死者の為に有難迷惑な徒労を尽くすか、或いは彼女達の独自に行っている迷い霧の森における調査を個人的に開始するか、どちらにせよ、あのPTが救われることはない。その後に残るのはやるせない程の寂寥感だ。死者が出たという事実が、彼女達には晴らし難い影となっている。どうあがいても、ヒヨリでは救えない。それから力不足を悟ってしまえば、精神的な枷となってしまう事は容易に予測できる。
「私、一緒に戦うって燐ちゃんに言ったよ? だから、はじまりの街から一緒にここまで来たんだよ? 今までみたいに、私を頼って………お願いだから、私を信じて………燐ちゃん達だけ大変な目に遭ってるのなんて、嫌だよ………」
「ヒヨリ?」
泣きそうな声で訴えてくるヒヨリを目の当たりにして、今更ながらに、思い知らされる
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