第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
17話 見えていなかったもの
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、そのプレイヤーが危機管理を促すために情報を他者に伝えているのは考えにくいという点。根拠は至ってシンプルなもので、情報が複数のプレイヤーに断片的に伝えているという、提供する情報の不完全性にある。何某かが持つ情報が仮に――俺の推測に反して――全て事実であり、当人は全てに遭遇していて、危険性を伝えようとしているのであれば、その情報を全てを開示するのが最善且つ確実な手段である。その最たる例がアルゴを介しての攻略本への記載であろう。しかし、何某かは情報提供の全てを他のプレイヤーとの相対にて行っている。姿を知られているのが確固たる証拠だ。
かくして、情報収集によって捜査線上に浮上した《重装備プレイヤー》の捜索に移行するかと思いきや、突如として送られてきたヒヨリからのメールが事態を急変させる。要領を得ない文面であったものの、その文面には《現在の調査は無意味》と《みんなを守って》という、ティルネルの言葉とされる記述は俺を困惑させるには十分だった。その真意までは不明だが、もし仮にプレイヤーを対象に捜索していた俺達の行動を認識した上での発言だとするならば、それは既にティルネルという存在は、モンスターはおろかNPCという枠組みすら超越した存在となる。
「………とりあえず、無意味と言われてもアルゴに任せた方がいいか」
餅は餅屋、情報は鼠。適材適所ということで、アルゴには引き続き情報収集を続行してもらうようにメールで頼み、俺は一先ずヒヨリの待つ拠点へと戻ることにした。
「…………………」
ただ、先程の肩に受けた感触が気味悪く残っていた事もあり、《隠蔽》スキルを使用しつつ帰途につくことにした。進行方向を同じくするNPCの背後に張り付きながら、周囲の歩行者たるプレイヤーやNPCを遮蔽物に用いつつ人影に潜り込むように移動する。生憎のところ、俺には殺気を感じたりというような超人的感覚は持ち合わせていないために判断はできないが、どこからか貼り付くような奇妙な感覚が続いているようにも思える。正直な話、SAOにおける感覚というのは全てシステムによって生成されたデジタルな信号をナーヴギアを通じて脳に直接伝えているものであり、そこに第六感的な感覚は専用スキルに依存しない限りは求めるべくもない。単なる自意識過剰であればいいのだが、されど気味の悪さというものはなかなか解消されてくれない。
半ば腹を括って歩を進め、急ぎ足で拠点へと戻る。慌てて鍵を施錠し、溜息を一つ零しつつリビングへと進入する。そこには、ソファに横たわるティルネルと、傍に寄り添うヒヨリの姿があった。
「またか」
「また、って………?」
「俺が初めて見た時にも気絶している。だから回収した。………同じかどうかは知らないけど、ずっと寝たきりってことはないと思うぞ」
「………そ
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