3部分:第三章
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「我慢するか。そのかわり長崎への案内は頼むぞ」
「任せて下さい」
それから戦局は変わっていった。日本にとって不利になっていくばかりである。佐世保にある船はさらに減り、大尉も神父と会うことは少なくなってきていた。たまに会っても深刻な顔をしていた。
「また、お願いします」
「はい」
会うのはいつも死者への祈りを捧げることを頼む時だけであった。そうした時にしか会わなくなっていた。祈りを捧げることはさらに多くなった。そして遂には。軍人以外にもそれを捧げることになってしまった。
「今日もじゃな」
「うむ」
神主と僧侶と三人で街を歩いていた。街のあちこちが焼けてしまっている。
「また空襲で人が死んだ」
「それも何人もじゃ」
「昨日もでしたね」
三人も暗い顔になっていた。サイパンが陥落し、そこから空襲を受けるようになったのだ。佐世保とて例外ではない。むしろ軍港のある佐世保はかなり執拗に空襲を受けていた。焼夷弾で鎮守府も兵舎も焼け落ち、民家にまで被害が出ていた。
「のう」
神主は暗い顔で二人に声をかけてきた。
「何じゃ?」
それに僧侶が応えた。神父も顔を向けていた。
「これから毎日かのう」
「空襲での葬式か」
「そうじゃ。毎日やらなければならぬのかのう」
「これがわし等の仕事じゃぞ」
僧侶は低い声でそれに返した。
「皆、御国の為に殉じておるのじゃぞ」
「そうじゃったな」
神主はその言葉に頷いた。俯いてはいるが。
「戦争で死んだ人も、空襲で死んだ人も同じじゃ」
「うむ」
「御国の為に死んでおるのじゃ。わし等にできることは」
「その人達に祈りを捧げることですね」
「極楽へ行って貰う為にな」
「極楽に」
「靖国にな」
「靖国神社ですか」
「そこに皆行くのじゃ。この戦争に尽くした人はな」
「そして天国に」
「なあ二人共」
神主は僧侶と神父に声をかけてきた。
「何でしょうか」
「戦争で死んだ者を貶めたりする奴は出ないじゃろうな」
「何でそんなことを言うのじゃ?」
「いや、何かふと思ったのじゃ」
神主は暗い顔で述べた。
「そんな奴が後で出るんじゃないかとな。自分が正しいと言う為にのう」
「他の国のことはわからん」
僧侶はそれに応えて言った。
「じゃがな。日本でそんな奴が出たならば」
「うむ」
「そいつは人ではない、餓鬼じゃ」
「餓鬼か」
「そうじゃ、少なくともわしはそんな奴には念仏は唱えんぞ。自分が正しいと思う為に他人、ましてやこの戦争で死んだ人達を貶める奴は人ではないわ、地獄に落ちる」
「地獄にのう」
「他の国の人間から見ればまた違う見方もあるじゃろう。わし等でも信じているものが違う」
「確かにな」
「それでも私達は」
「日本人じゃ。自分を清らかに思う為に
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