第152話 劉表動く
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ては正宗の臣下になった黄忠は藁をも掴むような存在と言えたことは確かだ。
「伊斗香、ところで静陽は未だ来ないのか?」
劉表は鋭い目つきで?越を見た。?越は頭を左右に振った。
「静陽は何を考えているのだ? この私を破滅に追いやる気なのか?」
劉表の表情は冷静だったが、裏腹に彼女の声は苛立ちを露わにしていた。
「静陽殿が何を考えているかわかりません。襄陽では農民を徴兵しているようです。周囲の県からも怪しげな連中をかき集めているようです」
「静陽は戦の準備をしているのか。伊斗香、荊州水軍の指揮権を静陽から剥奪しておけ」
「それは難しいかと」
?越は難しい表情で劉表に答えた。
「何故だ?」
「荊州水軍の半数は静陽殿の息がかかっています。元々、蔡一族の水軍を母体にしていますから仕方ないともいえます。荊州水軍の指揮権を静陽殿から公式に剥奪すれば牽制とはなるかと思います」
「面倒だがしないよりましであろう。荊州水軍の指揮権を静陽から剥奪することを本人に通達し、兵達にも周知しておけ」
「荊州水軍が割れる可能性があります」
「孫文台への備えを失う可能性があるのは痛いがやるしかあるまい」
劉表は苦い表情をするも?越に命じた。?越は劉表の意思が固いことを理解すると何も言わずに拱手した。
「秋佳はどうしますか? 襄陽にいる秋佳が宜城に戻りたいと文を寄越しております」
「秋佳は静陽に監視を付けられているはず。襄陽城から逃げようとすれば追手を放たれ拘束されるだけだ」
「それを分かっているから文をわざわざ寄越しているのでしょう」
「秋佳は詰めが甘い。文を寄越している者は信用のおけるものなのか?」
?越は劉表の問に沈黙した。?越の反応を見た劉表は張允の置かれている状態を理解したようだった。劉表は興味を失ったように右肘を玉座の欄干に置き、右手で自らの右頬を支えながら虚空を見つめていた。
「このままだと秋佳は死ぬかもしれません。仮にも姪ではございませんか。このまま見捨てては寝覚めが悪いかと」
「その姪は何故に静陽が劉車騎将軍を襲撃したことを私に報告しなかったのだ」
劉表は冷徹な雰囲気を放つ瞳で?越を見た。
「報告できなかったのではありませんか? 静陽殿の監視がついていれば妙な真似はできないでしょう」
「監視がついたのはつい最近と思うが。静陽は秋佳のことなど子供としか思っていない。劉車騎将軍を最初に襲撃した時点で私に報告をしに宜城に向かったとて叔母に小遣いをせびりに行ったとしか思わなかっただろう」
劉表の張允評に?越は苦笑いを浮かべていた。劉表は?越から視線を移しまた虚空を見つめていた。
「伊斗香、お前の言うことはもっともだな。このまま見捨てては寝覚めが悪い」
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