8部分:第八章
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「考えられます」
神父はそれをまた言う。
「だとすればフランス王も」
「そういえば」
別の神父がここで口を開いた。
「何かあったのか」
「フランス王もまた近頃常に何かに怯え剣を振り回しているそうです」
「フランス王もか」
「やはり。何かあるのでしょうか」
「騎士団の呪いが」
彼等が考えるのはやはりそれであった。
「覆っているのでしょうか」
「このバチカンをも」
「わからぬ。だが」
枢機卿は周りの者達に対して言う。その頭を必死に振って何かを否定しながら。
「恐ろしいことがまた起ころうとしているのは確かだ」
「はい」
他の者達もそれは感じていた。それから暫くして。まずはフランス王に異変が起こった。彼は昼も夜も休むことができなくなり遂に床の上でうなされる日々を過ごすようになっていた。
その床の上で。彼は周りに控える者達にうわごとの様にこう繰り返していたのだった。
「呪いだ、呪いだ」
「呪い!?」
「そうだ」
その整った顔は憔悴しきって痩せこけ髪も髭もかなり抜け落ちていた。その無残な有様で痩せこけてしまった身体を横たえ。そこで呻いていたのだ。
「呪いだ、騎士団達の呪いだ」
「騎士団達の」
「そうだ、その呪いにより余は死ぬ」
彼は言った。
「地獄だ、地獄が見える」
「地獄がですか」
「三人の裁判官達がいる。そして」
三人の裁判官はダンテの神曲に出る彼等であろうか。ラダマンティス、アイアコス、ミーノス。ゼウスの息子でありかつては王者であった者達だ。彼はそれを見ているのだろうか。
「騎士団の者達が。ぞっとする笑みで」
「いるのですか」
「血に塗れた顔で。拷問をそのままにして」
「何と」
「何と恐ろしい」
誰もがそれを聞いて驚きを隠せない。
「あの騎士団の者達が」
「地獄に」
「余は。今からそこに行くのか」
既に目は空虚を見ている。生者の目ではなくなっていた。
「呪いにより、罪により」
「陛下っ」
「御気を確かに」
「駄目だ。呪いからは逃げることはできぬ」
王の言葉は今にも消え入りそうなものだった。
「これで。余は。地獄へ」
「陛下、陛下!」
「な、何という御顔だ」
家臣達は王の最期の顔を見て凍りついた。それは恐怖にひきつり叫び声をあげるような顔だった。フランス王はその顔で事切れてしまったのだ。
また教皇もそれは同じだった。彼もまた衰弱しきり恐ろしい顔で亡くなった。この時に彼が叫んだ言葉もまた実に恐ろしいものであった。
「バフォメット・・・・・・今私を地獄へ連れて行くのか!」
不意にベッドの上から起き上がりこう叫びそのまま倒れ込んで死んでしまった。やはりその顔は恐怖により歪み目が大きく飛び出た恐ろしいものだった。こうしてテンプル騎士団を滅
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