十二話:試合と日常
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まい合わす顔がないと逃げているのだ。
だから、返事は決まっていた。ゆっくりと息を吸い込み口に出そうとするが―――
「そうだな、何となく敗北フラグが建っている気がするし、応援に行くか」
「リ、リヒター……私は残ってもええ?」
少し涙を目に溜めて上目遣いで頼み込んでみるジーク。
だが、リヒターはそれを無視してハリーに目配せをする。
ハリーの方も承知したとばかりに悪い笑顔を浮かべて指を鳴らす。
するとリンダ、ルカ、ミアの三人組があっという間にジークを包囲して抱え上げてしまう。
「うるせえ、いいから見に行くぞ」
「ちょっ! リヒター助けてーや!」
「下ろして貰ってもいいが、その場合は俺がお姫様抱っこで連れていくぞ」
その言葉に思わず想像してしまい顔を真っ赤にするジークを三人組は何とも言えない顔で運んでいく。
リヒターはそんなジークの元に近づき再度言葉をかける。
「安心しろ、お前は一人じゃない」
「あ……うん」
それだけ言い残してリヒターは先頭を歩くハリーを追い越して歩いていく。
そんな後ろ姿を見ていると自然とミカヤと顔を合わせる勇気が湧いてくる。
心の中でそっとありがとうと呟くジークにハリーは神妙な面持ちで尋ねる。
「なあ、あれ居眠りサイフ男の偽物じゃねーのか?」
「あはは……まあ、いつもよりえらい優しいもんね」
「あれが居眠り中にラリアットをかまして来る奴と同じには見えないッス」
「聞こえているぞ、お前ら」
周囲の彼に対する信頼が分かる会話であった。
あの後、結局あきらめて自分の足で観客席に向かうジークと共にミカヤの試合を見に行くとミカヤがミウラちゃんに強烈な一撃を叩きこんでいる所だった。
さらに、もう一撃容赦なく叩き込むとミウラちゃんは場外へと吹き飛んでいった。
「ほら見ろ、お前がグダグダしてっから終わっちまったじゃねーか!」
「……? 終わっとらんよ。あの子ミカさんの斬撃をそれなりに防いどるよ」
ジークの言葉通りにミウラちゃんはよろよろではあるがしっかりと自分の足で立ちあがっていた。
さて、俺はどちらを応援すべきか悩むな。心情的には子供のミウラちゃんを応援したいが親交の深いミカヤを捨てるわけにもいかない。
と、なると、両方応援するのがいいか。
「両方頑張れよ」
「ん? お前あのチビと知り合いなのかよ」
「ああ、選考会の時に知り合ったんだ」
「……リヒターの交友関係って女の子ばっかよねー」
「お前は知り過ぎた……」
ジークに言われてみて改めて自分に男友達がいないことに気づく。
今の今まで目を逸らしてきたが実は男友達というものがエドガーぐらいしかいないのだ。
学校では普通に話す
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