3部分:第三章
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れにしてもだ」
「ええ、全く」
「サラセンの者達のことに実に詳しい」
最初に出た悪意だった。ただし隠された悪意だ。
「よくぞそこまで知っているな」
「やはり交易で出会いますから」
「むっ、出会うとな」
「そうです」
向こうの悪意には気付かずに頷く。頷くがそれでも今は何の悪意もない肯定だった。彼等は。
「交易をしていれば当然ながら」
「教皇様」
王はここで急に真剣な面持ちになった。その顔で教皇に問う。
「これは由々しき話ですな」
「そうだな。この交易とは」
「?それは当然では」
「左様です」
騎士団の者達は二人の話に何の疑いもなく言葉を返した。
「しかもこれは教皇のお許しがあってすることです」
「ですから」
「確かに交易は許した」
教皇はそれは認めた。
「それはな」
「では何の問題もないではありませんか」
「違いますか?」
「交易は許したが出会いは許してはいない」
詭弁だった。バチカンがよく使うものだった。教皇は当時は宗教家というよりも政治家だった。信仰は方便に過ぎなかったのだ。ただ己の権勢と富の為に動いている者が多かった。バチカンの腐敗は恐ろしいまでのものでありそれは天下に知られていたがそれを恥とも思わなかったのだ。『恥を恥と思わなくなった時最も恐ろしい腐敗がはじまる』という言葉がある。その言葉通りの腐敗にあったのが当時のバチカンなのだ。
「違うか」
「!?何を仰いますか」
「我等は節度を守って」
「口では何とも言える」
己のことであるのは意識して見てはいない。
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