5.デスゲーム
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
クラッド。この城を、100もの層からなる巨大な浮遊城を攻略する。
またも青年が声を上げる。できるわけがない、と。
ベータ時代のことはよく知らないが、ネットなどから得た情報によれば、期間中攻略されたのは六層までだったらしい。ベータでは千人、正式サービスには一万人もいるが、この人数で攻略するとしても一体どれだけの時間が掛かるのか。そんなことをこの場にいたプレイヤー全員が考えただろう。
いまだにこの状況をどう判断していいか迷っている人が大半だった。現実感がなさ過ぎて。
この世界で死ねば、俺は死ぬ。現実でも。
今まで何とかしのいできた死というものが、視認できる世界。
けれど、それをすぐに飲み込むことなんてできるはずもない。
少なくとも一般人には。
マフィアのボスになるべく非日常を日常として生活してきたこの一年と半年。それが今この有り得ない状況を現実として(感情は別として)受け入れさせている。
そんな思考を遮って、またしても上から声が降ってきた。
『それでは、最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠をみせよう』
そういって中身のない手をかざす。アイテムストレージを確認するよう促す声。
疑問を感じながら、ウィンドウを出し、アイテムストレージを開く。
所持品リストの一番上。おそらくこれが茅場の言うプレゼントだ。アイテム名は《手鏡》。
そのアイテムにさらに疑問を深めながらも、その名前をタップし、オブジェクト化のボタンを押す。きらきらと効果音を発して手の中に小さく四角い手鏡が収まった。
試しに顔を映してみるが、俺のアバターが写るばかり。そして先ほどから感じていた頭痛―――この世界にもあるのかは疑問が残る―――は激しさを増す。まるで何かを知らせようとしているかのように。
「・・・・・・っわぁ!?」
頭痛に意識を取られている間に、周りではプレイヤーが白い光に包まれていた。もちろん、俺も含めて。
数秒で光は消え、恐る恐る目を開く。
最初は何が起きたのかよくわからなかった。周囲を見回して、やっとプレイヤーの見た目が変わっていることに気付いた。
現に、さっきから会話を聞いていた二人の姿はなく、変わったのだとその混乱する様子を見て分かった。
「あっ!・・・・・・お、俺だ。はは・・・・・・」
はっ、として持ち続けていた手鏡を見ると、見慣れた自分の顔が写っていた。思わずから笑いが漏れた。
明るい茶髪が重力を無視してあらゆる方向にはね、同じく琥珀色の目が戸惑いを映してか少しだけ揺れていた。少しだけ現実と違うところもあるようだったが、ほとんど同じだった。すごい技術だなあ、と現実逃避気味に思っていた。
改めて周りを見ると、男女比も大きく変わっているようにも思う。体形や身長も大きく変化している人も
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ