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ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
その頃
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えた。

 「あ、ああ、こんなものはたいしたことない」

 押さえた時にその部分、もとい頬がひりっと少し痛んだことで頬を殴られたことを思い出して、答えた。
 心臓が煩いほど脈打ち、触れられたところが痛みから温もりにすり代わっていくのを感じながらノエルは戸惑っていた。

 「ごめん、俺の所為だ」

 デイドラは自分の手に視線を落として、言った。

 「こ、こんな傷一度寝れば、治る。私のことより、お前のことだ。一体どうしたんだ?」
 「………………わからない」

 デイドラは目を落としたまま答える。

 「わからない、覚えていないということか?」
 「ああ、ほとんど思い出せない――ただ」
 「ただ?」
 「自分が炎の海にいたと思う」
 「炎の海?」
 「そう、そしたら聞こえたんだ」
 「何を?」
 「皆の声。死んだ皆の声が聞こえたんだ」
 「……っ」

 ノエルはデイドラの言葉を聞いて、すぐにそれが何なのか悟り、自分の考えが謝っていたことに気付いた。
 デイドラの復讐心は第三者ではなく、形を持たない過去の亡霊が煽っているのだと、デイドラの心の奥底にある強迫概念が彼を復讐に駆り立てるだとノエルは考えた。

 「『何で生きているんだ?』って言われた」
 「…………デイドラ」

 デイドラは今にも泣きそうな声で告白した。
 今まで無表情のデイドラばかり見てきた所為でノエルは彼の年齢を忘れていた。
 彼は未だ十五歳に及ばない少年なのだ。

 (デイドラは家族を失うにはまだまだ早過ぎたのだ。私が、私がその代わりになってやらねば)

 ノエルは硬く心に決めた。

 「デイドラ」
 「?、!」

 ノエルはデイドラが顔を上げるより先に抱き寄せ、

 「お前はまだ若い。これからも色んな出会いもあるだろう。別に過去を忘れろとは言わない。ただ過去に囚われないでくれ、私たちを受け入れてくれ。それだけでいい」

 耳元で優しく呟いた。

 「きっと、テュール様もそう思っている」

 そして、デイドラの後ろで眷族の名を呼ぶ主神を見ながら付け加えた。
 ノエルがデイドラから腕を離すと、彼はゆっくりと振り返った。

 「デイドラ…………遠くに行くな………………そばにいてくれ」
 「うん…………わかった………ずっといる」

 ベッドの傍で膝をついて、デイドラは自分を呼ぶテュールの手を握った、ずっと――ずっと。
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