その頃
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赤くさせている。
以降、ノエルがデイドラに一方的にいちゃついているリズとミネロヴァをそれらしい理由をつけて妨害しにかかったり、その騒ぎに乗じてこそこそと逃げ出そうとするデイドラが扉に辿り着くことすら叶わず、三人の手に捕まったりと、賑やかな時間が流れたが、その間、四人が、主神が地獄を味わっているとは知る由もない。
◆
「だ、大丈夫ですか、テュール様?」
「うぅぅ………………」
深夜になっても人で賑わう本通りから外れて、暗闇に染まる路地を、ノエルは、悪夢を見ているように呻きながらうなだれているテュールを背に負って歩いていた。
外出した主神が度々このような状態で帰宅するのだが、ここまでひどくやられているのは珍しかった。
迎えに行ったはいいものの、いつになっても会場から出てこない主神が心配になって、【ガネーシャ・ファミリア】の構成員に無理を言って、入れさせてもらい、しばらく探した末に打ち捨てられたように横たわるテュールを見付けて、今に至るのだ。
宴もあって、羽目を外して酔いどれた女神が主因だとノエルは気付いていた。
「テュール様は私の話し方は嫌ですか?」
だから、こんな時に主神に質問するのは間違っていると思っていたが、訊きたいという気持ちを押さえられなかった。
「うぅ?何じゃ?藪から棒に」
「いや、その、この話し方で私に話しかけらるのは嫌ではないかと、ちょっとした確認で訊いただけです。で、ですから、別に無理をして答えなくていいです」
ノエルは慌てて付け加えながら言った。
「…………誰かに言われたんじゃろう?」
テュールの疲労困憊の色が隠せない声の中に、どこか面白がるような気配が窺えた。
「…………その通りです…………」
自分が主神の前で隠し事ができないと自覚しているのか、素直にノエルは認めた。
「大方、ミネロヴァ辺りに言われたのじゃろうが、汝は汝が話したいように話せ。妾に合わせる必要はない。じゃが、妾はデイドラと話すように妾に話してほしい、とだけ本心を漏らしておこうかのう」
テュールは嬉しさと少しばかりの期待を声音にのせて言う。
「…………わかった、これからはテュール様にもこのように話そうと思う」
「うむ…………」
とだけテュールは短く返事をして、まどろみに沈んだ――笑みを小さな口元に湛えながら。
◇
「帰ったぞ、って寝ていたか」
ノエルが扉を潜ってホームに入ると、デイドラはベッドに仰向けにすやすやと寝ていた。
リズとミネロヴァはノエルが主神を迎えに行くことを聞くとそそくさと支度を済ませてホームを出て行って既にいない。
ノエルはそのデイドラの傍に背に負っ
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