17.キャットシッター・ミネット
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った。
(俺は、こんな所で守る者すらなく死ぬわけにはいかない……)
心の底から、黒い泥が溢れ出る。
噴出した泥は絶え間なく足元を見たし、この身体を焦がすように焼き尽くすような獄炎となる。
身を焦がすほどの生への渇望が、耳元で何かを囁いた。
――何を躊躇う。
(何をって……普通、躊躇うだろ)
――『今までも』そうしてきただろう。
(今までと言われても、俺は覚えてないんだぞ?)
――さあ、力を解放しろ。
(力って、何の――?)
気が付けば、その囁きに操られるようにリングアベルは剣を構えていた。
知らない筈の構え、知らない筈の力の奔流を感じ、意識が遠のいていく。
腕に走る激痛と、生命力が吸い取られるような感覚が、剣先へと集中していく。
やめろ、あの子を殺すつもりか、と誰かが叫んだ。
そうだ、あの娘を殺して生き延びろ、と誰かが囁いた。
ミネットは、そんな俺の様子に気付いていない。
「……みんにゃ、一斉にかかるにゃぁぁぁーーーーッ!!」
彼女の掛け声とともに、猫が一斉に動き出す。
意識を無視するように、身体は勝手に、刃を猫とミネットに向け――
「暗……黒……星、う――」
駄目だ。それを使うな。それを使えば、俺はミネットを――
「いたぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!いたよジャン!!あそこ、猫の群れぇッ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉッ!!猫畜生め、俺達のバッジを返しやがれぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
その剣の動きは、突如現れた二人の闖入者――ユウとジャンによって見事に中断された。
「――なぁっ!?何だ!?」
「にゃあああッ!?」
「ユウ!今だ、猫が固まってる隙にアレをぶちかませぇッ!!」
「分かった!俺達の未来を掴むために……さっき売店で手に入れたまたたびエキス水風船の爆撃だぁぁぁッ!!」
――このときリングアベルもミネットも与り知らぬことなのだが。
前話、街中で光り物が好きな猫にバッジを奪われたユウとジャンの二人は、猫を追跡しつつも確実に捕獲する方法やおびき出す方法を考えていた。その結果、彼らは偶然にもとある店で猫のお酒とも言われるまたたびエキスを発見していたのだ。
そしてユウがそのまたたびエキスを効率よく使用するために考え付いたのが、たっぷりのエキスを封入した水風船を投げつけて割ることで広範囲にまたたびを散布し、確実に足止めするという方法だった。
かくして対猫決戦兵器(即席)は実に美しい投球フォームで投げ飛ばされ、リングアベルのすぐ近くに着弾。盛大にまたたびエキスをまらまいた。
その匂い、その中毒性。猫の為に存在するかのごとき成分が爆発的に大気にばらまかれ、猫たちの好戦空気が一変した
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