1部分:第一章
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監禁して教皇になったのだ。そした男だった。
この教皇は神なぞ信じてはいなかった。聖職者なのにだ。神を祈る男にすぐに激怒してこう叫んだのだ。
「馬鹿者が!イエスは自分さえ救えなかった男だ。他人を救えることなぞできはしない!」
これが教皇の言葉だ。信じられないことに。こうした男であるからフランス王に捕らえられても誰も同情しなかったのだ。ただ悪事の報いを受けただけだと皆思ったのだ。
「八十近くにもなって酒と美女か」
「しかも美食まで」
「貪欲もそこまで行くと見事だ」
これは褒め言葉ではない。
「邪悪なものだ。報いを受けただけだ」
「その通りです。それで」
「それで。どうした」
「確かに聖職者への課税は成功しました」
教皇を黙らせたことが決定打だった。だがそれで終わらなかったのだ。
フランスの財政不足はそれで解決はしなかった。王はそのことに頭を悩ませていた。その解決を目指していた。その為に手段を選ぶつもりはなかった。
「ですが。まだ赤字は残っています」
「それをどうするかだが」
「王よ、お考えは」
「そうだな」
右手を己の口に当てる。そのうえで考える顔になるのだった。
「このままではどうしようもない」
「その通りです」
「ではどうするかだ。問題はそこだ」
そうなのだった。だが。
「しかし。どうしたものか」
「教会はもう使っていますし」
「教会はな。もう使えはしないか」
「他に税収はできる限り行っております」
それも既に行っていたのだ。各階層への租税を強化している。しかしそれでも赤字は解決していなかった。およそ不可能ではないかとさえ思えるものがそこにあった。
「ですが。それでも」
「他に金がある場所はないか」
「ある場所にはあるのですが」
ここで家臣は言う。
「ヴェネツィアやジェノバの商人達も」
「連中はまた別世界だ」
こう言って顔を顰めさせる。
「貿易を行っているからな。それへの収入が別格だ」
「胡椒にしろ」
「羨ましい限りだ」
この時代、いやローマ時代から胡椒は貴重品だった。それの貿易での収入は天文学的なものでありイタリアの諸都市を繁栄させる要因ともなっていたのだ。
「金のなる木がある者達は違う」
「そうです。連中は好きなだけ金が入ります」
「我々とは違ってな」
「借金もありませんし」
今度は借金の話も出た。
「そのことについてですが」
「催促でもあったが」
「はい。テンプル騎士団のものです」
ここでこの騎士団の名前が出て来た。
「奴等か」
「はい」
顔を不機嫌なものにさせた王に対して答えた。
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