八十九 目には目を 歯には歯を
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を蹴った。
気絶する寸前、それでもナルを気づかったヒナタの想いに応えるべく、彼は指し示された方向へ向かう。
既に次郎坊に勝利したナルがサスケを追っている事実を知らずに。
鬼童丸の敗因。
それは君麻呂との会話でヒナタを見失ってしまった点。
戦闘を秘かに窺っていたシノの存在に気づかなかった点。
口寄せした雨蜘蛛に迫る危機を失念していた点など、タイミングの悪さが原因だろう。
けれどなにより彼は遊び過ぎてしまった。故に報復を受けてしまったのだ。
蜘蛛の能力を持つ少年は、その蜘蛛を始めとする虫を操る一族の少年と出会ってしまった。
目には目を、歯には歯を。
そして―――蜘蛛には虫を。
何度も背後を振り返る。
残った二人の少女を気にしながら森の中を走り抜けるのは、シカマル・キバ・いの、そしてネジ。
やがて何処からか水音が聞こえた時、迷いを捨て去るように前方を向いたキバの鼻がぴくりと反応した。慌てて皆に立ち止まるよう呼び掛ける。
「待っていたよ」
警戒心を露に身構える四人。彼らを待ち構えていた少年が口許に微笑を湛えた。
中忍試験で少年の強さを間近に感じた事があるキバが後ずさる。同時に赤丸が怯えた声を上げた。
「僕の相手は誰かな?それとも……全員で掛かってくるかい?」
対峙した音の忍びの中で最も強そうな相手の早過ぎる登場に、キバ達の身が一瞬竦む。
音の五人衆―――『地の君麻呂』。
何を考えているのか。涼しげな顔で佇む君麻呂に、彼は一歩前へ進み出た。
唖然とするキバ達を庇うように立ちはだかる。
「―――俺が相手になろう」
君麻呂との対戦に自ら臨んだのは、『日向家始まって以来の天才』と呼ばれ続けてきた……日向ネジであった。
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