八十九 目には目を 歯には歯を
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ようとした。
今にも寄生しそうな蟲から【粘金の鎧】で身を守ろうとする。
だが、鬼童丸の身体を覆うはずの金色の体表が出現しない。チャクラを通さないという特性を持つ【蜘蛛粘金】が妙な事に分泌出来ないのだ。
絶対防御が発動しない。
動揺する鬼童丸を前に、シノが簡潔に説明した。
「蟲達に命じて、秘かに汗腺炎を起こさせた。何故ならそれによって、分泌活動は出来なくなるからだ」
汗腺炎とは汗腺に細菌が感染し、毛穴が塞がれた状態である。そもそも汗腺とは汗を掻く為のものだ。つまり汗腺が塞がれた事により、汗の如く分泌する粘金物質を鬼童丸は出せなくなったのである。
【粘金の鎧】でチャクラを用いる攻撃が効かないと察したシノは、鬼童丸がヒナタの攻撃から身を守った直後や、粘金物質を分泌していない合間を見計らって、蟲に汗腺炎を発症させたのだ。
「くそ…っ」
鬼童丸の全身が無数の蟲に覆われる。もはや姿形すら見えない状況で、彼は最後に足掻いてみせた。
指先に絡めた蜘蛛の糸を解く。
瞬間、周囲に張り巡らせていた蜘蛛の糸から放たれる【蜘蛛粘金】のクナイ。
足場の悪い木の枝上、硬質化したクナイがシノ目掛けて飛び掛かった。
「……ッ!!??」
流石に想定していなかったのだろう。全ての蟲達を鬼童丸に向かわせている為、シノは身を守るすべを持っていなかった。一瞬、反応出来なかったシノの前に、小さな影が立ちはだかる。
蜘蛛の巣を打破したヒナタが独特の構えを取った。象られた八卦の円が大きく広がる。
「【守護八卦六十四掌】!!」
拳から放たれるチャクラが青白い閃光の如く光り輝く。
鋭く、強く、大きく、そしてしなやかに。
弾かれたクナイがカカカッと地面に突き刺さった。
「ヒナタ…!」
全てのクナイを迎撃するや否や、ヒナタの身体がふらり崩れ落ちた。それをすぐさまシノが支える。
視界の端で、鬼童丸が蟲に覆われたまま倒れ伏したのが見えた。
シノの蟲は相手のチャクラを吸い尽くすまで決して離れない。もう鬼童丸は動けないだろう。
「よくやった、ヒナタ」
いくら虫達に命じていたとしても、汗腺炎はすぐ発症出来るものではない。それに鬼童丸の厄介な能力を知り得たのはヒナタの尽力によるものだ。彼女無しでは鬼童丸に勝つ事は出来なかっただろう。
ヒナタが身動ぎする。
何かを訴えようとしている彼女の様子を察して、シノは耳を澄ませた。息も絶え絶えに、しかしながら決して諦めない信念を宿した瞳がある方向へ向けられる。
「……な、ナルちゃんを…助けな、きゃ…」
ヒナタの視線の先を追って、シノは立ち上がった。状況からしてヒナタ同様、波風ナルも誰かと対戦中なのだろう。
シノは気を失ってしまったヒナタを背に担ぐと、木の幹
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ