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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十九 目には目を 歯には歯を
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た身だからこそ解る。君麻呂でさえ、死ぬ一歩手前まで追い込まれたのだ。
その君麻呂が最も傾倒し、敬服する彼と敵対するなんて冗談じゃない。



了承の意を得た途端、聞こえてこなくなった君麻呂の声に鬼童丸はほっと安堵の溜息をついた。
唐突に入れられた横槍から気を取り直して、ヒナタの姿を捜す。
彼女はすぐに見つかった。
何故ならば、潜んでいた鬼童丸を【白眼】で捜しあてたヒナタ自身がすぐ傍まで来ていたのだから。
「チィ…ッ!」

接近戦に持ち込もうと迫り来るヒナタ。
咄嗟に纏った『粘金の鎧』が柔拳から鬼童丸を守った。同時に口から吐き出した蜘蛛の糸がヒナタを大木の幹に張りつける。
柔拳でそれらの糸を断ち切るのを見越して、その隙に、鬼童丸は雨蜘蛛に子どもを産むよう命じた。


けれど、何時もならすぐに卵嚢を産み出すはずの従順な蜘蛛の様子がおかしい。妙だと気づいたその時には、鬼童丸の目の前で雨蜘蛛は白煙と化してしまった。巨大蜘蛛と共に蜘蛛の巣も掻き消える。

ぼうん、と軽い音を立てて勝手に消えてしまった己の口寄せ動物に、鬼童丸は愕然とした。
何処かで、虫の羽音がした。



「蜘蛛の天敵は蜂だ」
突然、聞き覚えの無い声が鬼童丸の耳に届く。


何時の間にか、鬼童丸の目の前には顔を隠した少年が立っていた。
即座に距離を取った鬼童丸はヒナタと少年を交互に見遣る。

「なんだ、てめぇ…こいつの仲間か?」
「そうだ。同じ木ノ葉隠れの忍びであり、同班の者だ」
己の身体を拘束する蜘蛛の糸を断ち切りながら、ヒナタが驚いた声を上げる。
「し、シノくん!?」

日向ヒナタ・犬塚キバと同じ八班の油女シノ。
いきなり現れた同班の登場にヒナタが戸惑う。淡々と「話は後だ」と答えたシノを、鬼童丸は睨み据えた。
「……お前が俺の雨蜘蛛を…」
苦々しげな顔をする鬼童丸に、シノは白々しく答えてみせた。
「そうだ。お前の蜘蛛に蜂の針を刺しておいた。何故なら、狩り蜂類のベッコウバチは蜘蛛を麻酔させるからだ」


ヒナタと同じ任務に行っていたシノは、その帰り道に【白眼】で慌てて駆けて行った彼女の後を追ったのだ。咄嗟にヒナタの身体にメスの虫をつけさせる。
メスを追うオスの虫を追い駆けて着いた先では、ヒナタが誰かと闘っている最中だったのである。


気づけば、鬼童丸は大群の虫に纏わりつかれていた。うるさい羽音でハッと息を呑む。
「てめぇ、蟲使いか!?」

瞬時に鬼童丸は、蟲と共に生きる一族の事を思い出した。ならば、現在自分の傍で飛んでいる虫達はこのシノという少年の【奇壊蟲】だろう。
(マズイ…ッ)

自分の情報が確かならば、彼ら一族が扱う蟲はチャクラを吸う。そうはさせまい、と鬼童丸は体中の汗腺から粘金物質を分泌し
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