第九話 『本当の始まり』
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ーーーー月見ヶ丘公園 午後7時
「どうやら爆撃は終わったみたいだな」
拾ってきた薪をへし折りながら、陵太は落ち着いた声でそう語った。
「そうみたいだな。全くなにがどうなってんだか」
などとのんきに言いながら、瀬田広一が持っていた大降りのナイフをくるくると手のひらの上で回していた。
「陵太、これなんて言うナイフ?」
その声を聞くと、薪の山にライターで火を点けながら顔色ひとつ変えずにいった。
「ブルドックナイフだろ。ソードブレーカーの上に突起がついてるのははじめてみたけど」
「軍用品なのか?」
「まあ実際、軍では、兵士にライフルやハンドガンは配布するけど、ナイフは配布しない。だからだいたいは自費でナイフを買う兵士がほとんどなんだ。まあ、軍人向けに作られたってことだろ」
オタクや……果てしなくオタクや……。なんて口にすると殴られるので言わないでおいて……なんて脳内を整理していると、火をつけ終えた陵太が、改まって言ってきた。
「お前はあいつのことをどう思う?」
それは恐らく瀬田広一のことを指しているのだろう。
「話をした感じ、悪い奴ではないと思う。でも、心の奥底には、恐らく、なにかを殺めることへの執着心があるんだろう。遺伝だなあれは」
「遺伝?」
俺の言葉に疑問を持ったのかあからさまに大きめの声をあげてきた。
「そう。あいつの母親、瀬田真須美は、5年前に渋谷で無差別殺人を行っている。2000年代最悪の悲劇って奴だな。15人以上の人が犠牲になった」
そう俺が語ると、陵太は思い出したかのように言い出した。
「あの事件か……。小学生も4人が犠牲になったんだよな。鮮明に覚えてるよ。横断歩道に撒き散らされた血の情景。あれは衝撃だった」
「そうだな。っと、しけたはなしはこのぐらいにしよーぜ。広一の様子を見てくる」
そう言って長時間しゃがんでいてしびれ始めていた足に鞭をうちながら、広一を拘束している管理室へと向かった。
ーーーー陸上自衛隊神河駐屯地戦略化学兵器研究所
沢山並んだコンピュータの群れを睨み付けながら、源川直哉は、むぅ〜っとうなり声をあげながら、自動販売機でかった缶コーヒーを喉の奥に流し込んだ。
「どんな状況だね?源川一等陸尉」
その声にハッとして振り替えると、そこには石井信人二等陸佐が腕組をして立っていた。
「はっ!我々の研究所からバイオハザードが起きた形跡はありませんでした。アラビア狂犬病から製造したヒルウィルスの流出もありません。恐らく何者かの……第三者の介入があったものと思われます」
そう報告すると、石井は組んでいた腕をとき、右手を顎にあてながら話を続けた。
「アラビ
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