【空拳編】 でーじすっごいよ
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海の底を揺蕩うように、無感。
暗い、と思ったのはしかし一瞬、前方からいくつもの光が突っ込んでくる。眩く流れる星々が後ろへ突き抜けていく。気分は宇宙船の乗組員だ。ワアァーーーーーーープッ!
目の前に矩形のウィンドウが咲いた。
極薄で透明で宙に浮いているホロ・キーボードを、ガラス細工みたいに透き通っていて肘から上がない架空の手を使って打つ。IDとパスワードを入力。
【どちらのアカウントでログインしますか?】という質問に、僕はテストプレイ時の友人のアカウントではなく、事前に自分で作成したそれを選択した。これから異世界を戦い抜くための、僕の分身。身長体格は現実そのままで、顔は……、眼光鋭い、戦士然としたイケメンにした。
再び、ワープ。
虹色のリングをいくつも通り抜ける。
途端、降りていたエレベータが下階に到達したように、足元に圧力を感じた。立っている。自分の足で。さっきまでソファに座ってたのに。
世界が開けた。
聞こえてきた深く重い唸り声のようなものが、歓声の形に整っていく。
光。あやふやな色と輪郭に、徐々に焦点が合ってゆく。
一面石畳の、巨大な円形の広場だった。
人、人、人が多い。
髪と瞳の色をとりどりにカスタマイズし、古代の戦士めいた簡素な服装に身を包んだ眉目秀麗な男女の群れが、まだ増える。次々に青白い光と共に現れる。恐らく一万人近いであろう、凄まじい密度の群衆が、拳を突き上げて歓声を上げている。
目の前にシステムメッセージが開いた。
【Welcome to Sword Art Online!!】
手を上にかざして、眺めてみる。デフォルメされたそれには、毛穴も産毛も血管も、指紋も掌紋も見当たらず、当然拳頭が異様に膨らんでいたり、皮がゴツゴツと厚くなったりもしていない。けれど、確かに自分の意志で動いた。小指から順番に丁寧に関節を折り曲げ、爪を指のつけ根に食い込ませ、最後に親指の腹でがっちりと中指と人差し指をホールドしてみる。
拳を、突き上げた。
「このゲームでーじすっごいよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
―――さて。
恥ずかしげもなく地元の訛り丸出しで叫んでしまってから、二時間ほどが経過していた。
場所は同じく、はじまりの町、中央広場。
五メートルほどの距離を挟んで、ひとりの男性と向かい合っている。
深い青の衣服に身を包み、|艶
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