16.次代の剣士たち
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時の大司教や法王もそれを認めて一時は戦争状態に突入した。
だが蓋を開けてみれば、エタルニアの軍勢の一方的な攻勢に大敗を喫する結果となった。
当然と言えば当然だ。聖騎士ブレイブは綿密すぎるほど綿密な計画を練っていたし、エタルニアの確保したアスタリスクの数も正教の2倍近く。戦力的にも戦術的にも、正教騎士団は圧倒的な苦境に立たされることとなった。
正教騎士団は一部を除いて実戦経験が圧倒的に少ない。基本的に治世の安定した正教圏では、戦いの相手は魔物か時折やってくる神主導の烏合の衆が関の山。しかも現実には、その襲撃者を撃退していた兵士の大半がエタルニア側に寝返ってるという有様だった。
大小様々あれど、正教上層部の腐敗がその理由であることは、今となっては否定できない。
ともかく、既に敗北は時間の問題だった。
そして好戦派が弱ったところでゼネオルシア家は悠々と立ち上がり、これ以上戦っても正教に益がないこと、正教の行った判断にも非があったことなど利権と正義の二重で周囲を説得し、あれよあれよという間にエタルニアとクリスタル正教を和平の道へ導いた。反対の声も上がったが、既にエタルニアとの戦いで痛手を負った好戦派の声に耳を貸す物好きは殆どいなかった。
そしてゼネオルシア家は何一つ手を汚さないまま自身の利権と名声を守り、降伏後は何事もなかったかのように正教騎士団三銃士の席に居座ってエタルニアと交渉し、正教騎士団の解散を防ぎつつ粛々と正教の内部粛清を手伝った。その結果、今の正教上層部はその大半がエタルニアの傀儡と化している。
そう、ゼネオルシア家はこの結果を予見していたのだ。
その上でバレストラを初めとするたち誇り高き騎士を生贄同然にして、和平後は犠牲を最小限に抑えた功労者として名声を上げた。誇りと守るべきものの為に戦場に散った好戦派を貶めて。
常に勝利と繁栄を。例えその陰で名家が権利を剥奪されて没落し「愚か者」と嘲りを受けようとも、自分たちの地位だけは揺るがない。それがバレストラ家嫡男として生まれたジャンが持っていた、ゼネオルシア家への印象だった。
そして、2人はイスタンタールの留学生同士としてルームメイトになることで初めて出会う。
ジャンは当初、先祖の恨みとばかりにユウに邪険に接し、無視や拒絶など当たり前とばかりの顔をしていた。……ところが、ユウはどんなに邪険にされて追い返されても、何故かニコニコ笑いながら子犬のように近づいてくる。下心も邪気も悪意もなくとことん優しいお人よしであるユウに、ジャンは次第に自分の中でのゼネオルシア家のイメージが崩れていくのを感じた。
実はゼネオルシア家内部で様々な事情があり、ユウは父親からさほど積極的な教育を受けていなかったらしい。そのため出来上がったのは知的好奇心旺盛で
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