暁 〜小説投稿サイト〜
鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
16.次代の剣士たち
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 
 オラリオは常に娯楽に貪欲な街だ。
 だからこそ、怪物祭に限らず(フィリア)と名の付くイベントでは街全体が賑わう。
 観光客も珍しいテイムモンスターを一目見ようと集まるし、普段は冒険に明け暮れる冒険者もその多くが屋台で腹を満たして笑いあう。恋を深める人も交友を深める神も、誰も彼もが祭りを歓迎していた。

 そんな祭りを物珍しそうにきょろきょろ見回す栗色の髪の少年が、しきりに感嘆の声を上げている。

「わぁ……!すごい人だかりだなぁ………さすが世界一の迷宮都市オラリオ!ガテラティオじゃ人が集まる時は祭りというより儀礼って側面が強いもんなぁ」
「だな。俺ぁ堅っ苦しいのよりこういう気ままな祭りの方が性に合うぜ」

 後ろから、その少年と共に行動するもう一人が同意した。
 栗色の髪の少年が温厚そうな柔らかい印象を受けるのに対し、もう一人は彼より身長が高くて大人びた印象を受ける。

「にしてもよぉ。あんまりキョロキョロしてっと田舎者だと思われるぜ?ユウ坊っちゃんよぉ」
「う……し、仕方ないじゃないか!俺、フィリア祭を見るのは初めてなんだもん!そういうジャンだって屋台を観ては物欲しそうな目線を送ってるじゃないか!」
「そ、それはまぁ……えっと、要するにアレだ。小腹がすいたが小遣いに余裕がねぇって言うか……」
「ほら!だから幾ら掘り出し物だからってヘファイストス・ファミリアの武器を買うなんて止めておけって言ったのに……しょーがないなぁ。奢ってあげるから何か食べよう?」
「はは……ワリィな、ユウ。イスタンタールに戻ったらメシを奢って返すってことで良いか?」
「もっちろんさ!あ、でも辛いのは勘弁してよね?」

 少年――ユウの元気一杯な返答に、ジャンはあちこちがはねた長い髪を指で弄りながら「お子ちゃま味覚め」と苦笑いした。
 ジャンの背中には先ほど買ってしまった二振りの剣が布にくるまれた状態で背負われており、逆にユウの鞄にはオラリオでしか手に入らない珍しい書物が詰っている。その対照的な買い物がそのまま二人の本分を表しているようにも見える。

 彼らの青を基調とした学生服と胸に光る金色のバッジを見れば、分かる人なら二人が何者なのかを理解できる。その学生服とバッジに刻まれた星の文様は、オラリオより南に位置するナダラケス地方東端にある魔法学園都市「イスタンタール」の生徒の証である。

 イスタンタールは古くから学問を追求する機関として世界に多くの人材を輩出し、その中には国家中枢を担う政治家、著名な作家、権威ある研究者、果てはクリスタル正教の重役になった者も存在する由緒正しき学校だ。無論この中から冒険者やギルドへ進路を進める者もいる。
 学問というのはどちらかといえば神への信仰とは逆の側面もあるが、それを好しとする知の神々の助
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ