4部分:第四章
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第四章
彼が寝ているその部屋に忍び込み口に毒を流し込んだ。これで全てが決まってしまった。
皇帝が明け方に戻ってみるともう趙王は死んでしまっていた。誰の手によるものかは言うまでもない。皇帝は己の浅はかさを悔やみ嘆き悲しんだ。
この報はすぐに呂后に伝えられた。彼女はこの報を自室で聞きまずは満足そうに笑った。
「まずはよしです」
「そうですね。まずは趙王です」
「無事終わりました」
「その通りです。そして」
后はさらに言葉を続けるのだった。
「残るはあの女です」
「ではすぐに」
「また毒を」
「いえ」
しかし呂后はここで毒を退けるのだった。
「今度は毒を使いません」
「ではどうされるのですか?」
「怨んでも怨み足りないあの女」
その言葉に激しく、そして邪な炎が宿った。
「ただ殺すだけでは飽き足りません」
「ただ、殺すだけでは」
「といいますと」
「今から命じます」
彼女はすぐに言ってきた。
「今すぐにです。まずは」
「はい」
「それは」
こうして傍の者達にあることが命じられた。戚夫人はそれ以降姿を消した。皆このことに恐ろしいものを感じていたがその中での呂后が催す宴の中で。彼女はふと上座にいる皇帝に対して声をかけてきた。
「陛下、宜しいでしょうか」
「はい、母上」
この辺りはまさに皇帝とその母のやり取りであった。丁寧なものである。趙王のことはお互い心の中に収めて。
「何でしょうか」
「お見せしたいものがあります」
ここでは穏やかな笑みを作って述べたのだった。
「是非共」
「是非共ですか」
「はい、ですからこちらへ」
「?一体何が」
「来られればわかります」
彼女は今はこう言うだけであった。そうして皇帝を案内した場所は。
「厠ではないですか」
「はい」
また穏やかに自分の後ろについてきている彼に答えた。
「そうです、そこに面白いものがいますよ」
「面白いもの?」
皇帝はそう言われても訳がわからず首を傾げるばかりだった。
「厠にいるといえば」
「豚というのですね」
「はい、それだけですが」
この時代は厠の下、日本で言うならくみ取りの場所に豚を飼っていた。即ち糞尿を豚達の餌にしていたのである。これはインドでも沖縄でも行われていた。
「豚に何が?」
「ですから面白い豚がいるのです」
ここで呂后の顔が何かを含んだ笑みになった。
「ですからここに」
「はあ」
皇帝は何が何なのかわからないまま彼女に連れられ厠に入った。そしてそこから豚達を覗く。后はその中にいたあるものを指差したのだった。
「ほら、あれです」
「あれ!?」
「見えませんか。あれです」
言葉が実に楽しそうなものになっていた。
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