圏内事件 ー事件ー
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日が暮れてからだった。
すでにシィは迷宮区の探索を終え、帰ってきているらしく窓から漏れる灯りは二人に振り回され、疲労困憊した心にどこか安心感を与えてくれる。
「おかえり〜」
「ん、ただい……」
ただいま、と言い終わる前にお気に入りのソファへと倒れこむ。
自分が思っていたよりも疲れが溜まっていたらしい。腰から垂れる尻尾も力無さげに垂れてしまっている。
ソファへと突っ伏したまま動かないでいるとすぐ隣にシィが腰掛け、サラサラと指で髪の毛を梳いてくる。心地よさにウトウトとしかけているとシィから発せられた言葉に驚愕させられる。
「なんか、上層の方で公開処刑があったんだって?」
「……公開処刑?」
なにやら物騒なワードにソファに突っ伏した状態から顔だけを上げ、聞き返す。
「首吊りされた男の人が、槍に心臓を貫かれて死んだって聞いたけど……違った?」
「どこの串刺し公だよ……。とりあえず、公開処刑っていうか、圏内PKな?」
考えるまでもなく、口伝によって人から人へと噂が伝わっていった際に事実と誤差が生まれてしまったらしい。
なるほど、どうやら圏内PKは下層では公開処刑という認識になっているらしい。そして、早めに手を打たないと面倒な事になりそうだな、と頭の片隅に留めておく。
「ん……まぁ、詳しい話は夕食の後にしますか」
「謎解きはディナーの後でってやつだね!」
シィは、それは違う、という俺の否定の言葉を聞く前にダイニングの方へと駆けていき、嬉々としながら準備を取り掛かっていた。
奇怪な事件があったのによくそんなに喜べるなとシィの楽観的な性格を羨ましく思いつつ、疲れた体に鞭打ち、夕食の準備へと取り掛かる事にした。
そして、夕食後。
殺人事件の概要を話しながら、食後のティータイムと洒落込んでいた。
「ダメージを受けるはずのない圏内で人がね〜……」
神妙そうに傾きつつ食後の紅茶を啜り、紳士ぶった態度をとるシィだが、残念なオーラが漂ってしまっており惜しい。
食事の後、話した事と言えば今日の調査で分かった事、主に被害者の名前や人物関係、そして、第一発見者である中層の女性プレイヤー"ヨルコ"さんの事。そして、男の心の臓を貫き、その命まで奪った元凶の逆棘の短槍の情報について。
ざっとこんな感じなのだが、シィが先ず目をつけたのが例の槍だった。
「名称は"ギルティソーン"。罪の荊って訳だけどなんかわかるか……?」
俺が一番信用できるという身も蓋もない理由でキリトに押し付けられた逆棘の槍をストレージから取り出し、テーブルの上に置く。
何か名案を思いついてくれるんじゃないか?と淡い期待と共に目の前で、逆棘の槍を弄んでいるシィを見つめていると口元を歪
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