圏内事件 ー事件ー
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キリトの言うアレとは今朝渡したバーガーに使ったソースの事だろうか、などと推測しながら、フォークで刺したサラダを口の中へと運ぶ。シャキッとした葉物の食感と瑞々しさ、そして粉チーズ風の味付けの相性がよくて頬が少し緩む。
二人の会話を聞き流して暫し前菜を楽しんでいるとあ!と二人同時に呟くと顔を見合わせる。
「「醤油!!」」
「は?」
会話は調味料議論にまで発展したらしく、日本人が愛して止まない調味料を叫ぶ事になり、事前に照らし合わせたかのようなタイミングぴったりな二人に思わず吹き出しそうになる。
ーーだが、
「…………ィ、イャァァァァァァァァ??」
「「「ーーーー??」」
聞こえてきた恐怖に満ちた悲鳴により楽しい食事の時間は終わりを迎えた。
◆◇◆
「今のって……!」
「店の外だわ!」
いち早く反応したアスナは表情を険しくさせると、椅子を慌ただしく引き、出口へと走っていく。自分も慌てて前を行く白と黒の背中を追う。
二人の後を追い、悲鳴の発生源であろう円形広場へと飛び込んだ。しかし、そこで信じられないものを目の当たりにする事となった。
広場の一角には、石造りの建物がそびえている。そして、二階の窓から一本のロープが垂れ、その先端には男性のプレイヤーが吊るされていた。
吊るされたフルプレート・アーマーを全身を包み、大型のヘルメットを被った男の首元にはロープががっちりと食い込み、苦しそうに喘いでいる。だがしかし、ここは仮想世界であり、窒息なんてありえない。
広場に集まったプレイヤー達を恐怖に陥れているのはそれではない。
恐怖の根源にあるのは男の胸元を深々と貫いている漆黒の短槍にある。そして、その傷口からは血のような紅いエフェクト光が明滅を繰り返す。
つまり、今この瞬間も男のHPにダメージが生じている事となる。
「早く抜け??」
驚愕から覚めたキリトが叫ぶ。その声に従い、男の両手がのろのろと動き槍を抜こうとするが、逆棘の生えたその槍は微動だにしない。
「くっ……」
どうするべきなのか、思わず苦悶の声が漏れる。
普通、『圏内』ならHPが減る事はまずない。それはここアインクラッドにおける絶対的なルールであるから。だが、男の胸元から溢れるように明滅を繰り返すエフェクト光が不安に落とし入れる。
「……なるようになれ!」
動揺して動かない体に喝をいれると石畳の床を駆ける。
「キリト!受け止めろ!
「っ……!わかった!」
すぐに男が吊るされている真下まで辿りつき、速度をそのままに思い切り跳躍する。
届くかどうかは五分。うまくいく事を願い、腰に吊るされた刀の柄へと手をか
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