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ドリトル先生と森の狼達
第四幕その二
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 先生はお爺さんにです、あらためて尋ねました。
「この辺りにはそうした存在のお話も多いのですか」
「あるよ、一本だたらっていう化けものが出るとか」
「一本だたら。足が一本で山にいる妖怪ですね」
「ああ、先生知ってるのかい」
「調べたことがあります」
「へえ、外人さんなのに詳しいね」
「そちらの方にも興味がありまして」
 先生はお爺さんに微笑んで答えました。
「それで」
「成程ね、とにかくね」
「一本だたらが出たりするんですか」
「そうだよ、ただ普段は昔偉いお坊さんに封じ込められて出て来ないんだよ」
「けれど、ですね」
「確か十二月二十日だったな、旧暦だったか知らないが」
 その日だけはというのです。
「封印が弱くなって出て来るから」
「その日はその山に入らないんですね」
「そうさ、誰も入らないんだよ」
「そうしたお話があるのですね」
「先生もその日はその山に絶対に入ったら駄目だよ」
「それは何処ですか?」
「伯母ヶ峰山だよ、あと和歌山の果無山脈か」
 お爺さんはその一本だたらが出るという場所について先生にお話しました。
「そうした奈良と和歌山の境にな」
「そうしたお話もあるんですか」
「あと、どっかの山か知らないけれど山の神様がいるってい場所があってな」
 このことはです、お爺さんも知らないみたいです。ですがそれでも先生にかなり剣呑なお顔になってお話しました。
「鳥居か何かがあってそこから先に入ったらな」
「山の神様に襲われますか」
「らしいんだよ、何でも顔が人で身体が獣で赤子みたいな声で鳴くらしいんだよ」
「何か中国の人を襲って食べる妖怪みたいですね」 
 先生はその姿と鳴き声のお話を聞いてふと思いました。
「それですと」
「あれっ、中国の人食う化けものはそうなのかい」
「はい、それであちらでは山の中で赤子の声を聞いたら逃げろというとか」
「まあ普通山の中に赤ちゃんなんていないからね」
「そう言うそうです」
「そうなんだな、まあとにかくな」
 お爺さんは先生にあらためてお話しました。
「ここと和歌山の境にはそんな話がある山もあるんだよ」
「だから奥には迂闊にはですか」
「わし等も入らないんだよ」
 そうだというのです。
「他にも何がいるかわからないからな」
「猟師の人も」
「滅多に入らないよ」
「ではやはり密猟は」
「ないよ」
 絶対にというのです。
「そんなことは」
「そうなのですね」
「密猟なんて絶対にない」
 お爺さんは右手を横に振って確かなお顔で先生に断言しました。
「この村ではな」
「そうですか、わかりました」
「まあそんな話があったら」
「それならですか」
「それは嘘だよ」
 そうに違いないとまでです、お爺さんは言い切りました。
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